第85話

 そう考えれば、辻褄が合ってしまった。

 あゆらは写真の中にいる少女たちに美鈴の姿を重ねた。自身が何も知らず呑気に暮らしている間、美鈴がこのいやらしい目つきをした男たちの餌食になっていたかと思うと居た堪れなかった。


「俺が思うに、これは富裕層向けの会員制売春クラブや。その証拠に、あゆらも知ってる顔があるやろ?」


 志鬼の言う通り、写真には巷で有名な代議士や弁護士など、あゆらがホームパーティーなどで見かけたことがある人物もいた。


「探偵の奴がなんか匂うと思って、監察医が出てきた店を張ってたらこいつらの写真が撮れたわけや。帝はこの売春クラブに自分が脅した女の子らを売り捌いて、権力者たちがそれを買う、っちゅう需要と供給が成立してるんや。だから校長は帝の暴挙も知らんぷり、そらそうや、帝の罪を明るみにすることは、自分の罪を晒すのと同じやからな」


 清志郎を警察に突き出せば、捜査線上に自分たちが浮かび、芋づる式に逮捕されかねない。

 つまり清志郎は、この売春クラブの客である社会的地位が高い者すべてを味方につけているということになる。


「どうりで人殺してもあれだけ余裕でおれるはずやわ。帝がどうやってその売春クラブを知ったかは謎やけどな。これだけの権力者を寄せ集めてるクラブや、元締めは相当な大物やで。まさか監察医からここまでの話が出てくるとはな」

「美鈴の……結果は?」

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