第82話
「同性に好かれるって素敵なことだと思うわよ」
「そうかああ? 俺はなあ」
志鬼は側に来たあゆらの華奢な腰に手を回すと、子猫を持ち上げるように軽々と自身の元へ抱き寄せた。
「あゆらにだけ好いてもらえたら他はどうでもええわ」
あぐらをかいた志鬼に後ろから抱きしめられる形になったあゆらは、たちまち顔を真っ赤にさせた。
それを見たアキは空気を読んでか読まずか、あゆらの胸からするりと抜け出しローテーブルの下で眠り始めた。
「だ、だから距離がちか、近すぎるでしょう、ってば」
「ええやん、報酬報酬、働いたご褒美!」
「あなたにはプライドというものがないの?」
「ない!」
「いっそ清々しいわね……はあ、わかったわよ」
「ほんまに!? ほなチュウしたい! このセクシー泣きぼくろにチュウしたいい!」
「もう、好きにしてちょうだい」
ため息をつきながらも嫌がる素振りのないあゆらのチャームポイントに、志鬼はそれはもう嬉しそうに吸いついた。
――強引だけど嫌じゃない。恋って怖いわ……。
あゆらはとっくに志鬼への恋心を認めていた。幼い頃童話で見たような王子様とはかけ離れていたが、志鬼に対する熱い想いを他に例えようがなかった。
「あゆら〜、好き好き好き好き」
「はいはい」
後ろからぎゅうと強く抱き込めながら顔に頬を擦りつけてくる志鬼に、あゆらはスマートなライオンに懐かれているみたいだ、と感じた。
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