第69話
敵対する組との抗争や、邪魔な人間の処理などで、物心つく頃から死体を目にすることも珍しくなかった。
物怖じしないのは肝が座っているからではなく慣れただけ、すぐに行動に移すのは明日自分が生きている保証がないため、後悔しないように今できる最善を尽くす。それらは危険と隣り合わせの生い立ち故に染みついた悲しき
志鬼もそれを自覚しているため、あまりよいものではないと思っていた。
それなのに、あゆらに尊いものでも見るかのような目で褒められ、つい驚いてしまったのだ。
自分とは違う美しい瞳に、映ってはいけないような、ずっと映っていたいような、志鬼はもどかしくも甘い気持ちに揺れた。
「あゆらは、純粋やな」
「私はただの世間知らずよ、純粋とは違うわ」
「ほう、世間知らずねえ」
そこで志鬼は、面白い悪戯を思いついた子供のような顔をした。
「ほな、岸本家の御令嬢……ちょっぴりイケナイお遊び、してみる?」
興味を惹く誘い文句に、あゆらは首を傾げながら不安と期待に胸を膨らませた。
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