第58話
「はい、皆さんご静粛に」
そこで担任の女教師が手を叩いたので、生徒たちは教壇に視線を集めた。
「昨日起きたことはもう皆さんご存知かと思いますが、このクラスの生徒、萩原美鈴さんが亡くなりました。体育館の倉庫で、自殺したそうです」
“自殺”というワードを耳にすると、あゆらと志鬼は目を合わせ、静かに頷いた。
これで嘘の検死結果が出されたことは明らかになった。変死を遂げた愛娘の解剖を頼まないはずがないため、それを担当した監察医が怪しいということも。
次なる二人の行動は、美鈴の親からその人物の名前を聞き出すことに決まった。
その後は定型分のように美鈴を悼む言葉が並べられたが、自殺と聞いて安心した者が大半だっただろう。
もし他殺とわかろうものなら、どこにその殺人鬼がいるのかと、皆恐怖の底に突き落とされるからである。
教師の話が終わると同時に、朝のホームルーム終了のチャイムが鳴り響いた。
教師が部屋を出て行くと、生徒たちは親しい者同士で集まり、美鈴の件を話したり、不安げな表情で志鬼の方をチラチラ見たりしていた。
そんな中、徐に立ち上がった志鬼は真っ直ぐに歩き出す。
それに気づいたあゆらも席を立つと、志鬼の後を追った。
志鬼が足を止めたのは、清志郎の前だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます