第58話

「はい、皆さんご静粛に」


 そこで担任の女教師が手を叩いたので、生徒たちは教壇に視線を集めた。

 

「昨日起きたことはもう皆さんご存知かと思いますが、このクラスの生徒、萩原美鈴さんが亡くなりました。体育館の倉庫で、自殺したそうです」


 “自殺”というワードを耳にすると、あゆらと志鬼は目を合わせ、静かに頷いた。

 これで嘘の検死結果が出されたことは明らかになった。変死を遂げた愛娘の解剖を頼まないはずがないため、それを担当した監察医が怪しいということも。

 次なる二人の行動は、美鈴の親からその人物の名前を聞き出すことに決まった。


 その後は定型分のように美鈴を悼む言葉が並べられたが、自殺と聞いて安心した者が大半だっただろう。

 もし他殺とわかろうものなら、どこにその殺人鬼がいるのかと、皆恐怖の底に突き落とされるからである。


 教師の話が終わると同時に、朝のホームルーム終了のチャイムが鳴り響いた。

 教師が部屋を出て行くと、生徒たちは親しい者同士で集まり、美鈴の件を話したり、不安げな表情で志鬼の方をチラチラ見たりしていた。

 

 そんな中、徐に立ち上がった志鬼は真っ直ぐに歩き出す。

 それに気づいたあゆらも席を立つと、志鬼の後を追った。

 志鬼が足を止めたのは、清志郎の前だった。

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