第46話

「それって、恐喝みたいになるんじゃ」

「あっちが卑怯な手使ってくるのにこっちだけ正当方では太刀打ちできんで。もちろんちゃんと事実を公表してくれたら済む話や。あれが自殺やないことは俺がこの目で確かめてる。後日自殺やって嘘の知らせが出た時点で、速攻で動く。……帝とやらが、大人しくしてるうちに、な」


 そうだ、とあゆらは思った。

 事件が落ち着くまでは清志郎は目立つ行動を控えるだろうが、その後また新たなターゲットを見つけるに違いない。

 そうすれば第二、第三の美鈴のような犠牲者が出かねないのだ。


「あゆらは美鈴って子と昔から仲良かったんやろ? なら、親から解剖した担当者の名前を聞き出してほしい。嫌な役回りにはなるけどな……」

「いいえ、やるわ、私にできることなら、なんだって」


 あゆらの迷いのない凛とした瞳に、志鬼は強く引き込まれ、不謹慎な考えがむくむくと顔を出す。


「そうやなーあ、けっこう危ない橋渡ることになるしな、ちょっとくらい報酬があったら嬉しいけどなーあ」


 チラチラ横目で見てくる志鬼を、あゆらは怪訝な顔で見返した。


「な、何よ今更、無料じゃなかったの?」

「金なんかいらん、一番の報酬がここにあるやん?」


 そう言って志鬼はあゆらの顔を指差した。


「そうや! この件が無事に解決したら一発やらせて!!」

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