第39話

「ほな、極道がどんなことしてるかもわかってるん?」

「え……、お、オレオレ詐欺……?」

「微妙なとこ突くな、確かに小さい組はそういうこともしてるらしいけど。大体は法で禁止されてる武器、薬物の取り引き、裏カジノ経営とか、そんなところや」

「そ、そう、なのね」


 普段の生活ではまったく出てこない言葉が並び、あゆらは自身の世界の狭さを思い知る。

 まだどこか現実味がないようにぼんやりするあゆらを前に、志鬼はインナーを着直すとシャツを羽織った。


「……あなたも、そういうことをしているの?」

「なかなかストレートにすごいこと聞くな」

「だって、極道の息子だからといって、親と同じことをするとは限らないじゃない」

「へえ、嬉しいこと言うてくれるな、大抵は親や育った環境で判断されるからな」

「そうね……なんだか、おかしいわよ、そんなの」


 親が偉大だからといって子までもてはやされる、親が犯罪者だからといって子まで蔑まれる。

 それなら子は親の延長でしかないのかと、あゆらは疑問を持ち始めていた。


「むしろダサいくらい綺麗なもんや。犯罪らしいことなんか、まあ喧嘩くらいか。でも喧嘩も度を越したら傷害やけどな」

「そう……あなたがしてないなら、いいじゃない、怖がる必要もないわね」

「って信じるん?」

「何、嘘なの?」

「いや、嘘やないけど」


 いくら助けたからといって、あんなド派手な刺青を見てすぐに信じると言えるあゆらが、志鬼には眩しく見えた。

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