第28話

「あの帝くんがあんなこと、信じられなかった……でも確かにあれは帝くんだった、あんな綺麗な容姿の人を見間違えるはずがないもの。今朝すれ違う時だって『昨日はどうも』なんて……」


 それを聞いた美鈴は、驚愕の表情をした。


「あゆらが見たって、気づかれてたってこと……?」

「そうね」

「もしかして……何か行動を起こした?」

「両親には話すらできなかったわ、だから担任の先生と校長先生に話したけれど、私の言うことは信じてもらえなくて」

「あゆら!!」


 突如、美鈴に大声で名を呼ばれながらあゆらは両肩を掴まれた。大人しい彼女がこんなに気を荒くしたところを見たのは、初めてだった。


「あたしの話をよく聞いて、あゆらはね、これ以上何もしちゃいけない、見たことは全部忘れるの。あたしも元はと言えば……一年生の時友達に、彼にひどい目に遭わされているって相談を受けて、それで、帝くんにやめてくれないか、話をしに行ったの……そうしたら、次は私がターゲットにされた。その友達はもう転校していないし、誰も助けてなんてくれない……」


 手に力を込めながら、鬼気迫る表情で話す美鈴に、あゆらは驚きを隠せなかった。


「だ、だから……だから私が助け」

「助けられるわけないよ、これはね、そんな単純な問題じゃない……あゆらが思っているより、ずっと、根深い話なんだ……」

「何、どういうことなの? ただのいじめではないということ?」

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