第2話

 その数時間後、関東の洗練された街並みでは、そんな裏社会とは無縁の清々しい朝を迎えた少女がいた。


 初夏の爽やかな風に靡く艶やかな黒のロングヘアー。

 白を基調としたセーラー服の長いスカートを花弁のように揺らしながら、岸本きしもとあゆらは今日も足取り軽く学校へ向かっていた。


「今日もいいお天気だわ。素敵な一日が始まりそうな気がする」


 快晴の空に浮かぶ太陽の光を手で遮りながら、右目尻の泣きぼくろが印象的な美少女は麗しく微笑んだ。


 この世には光と影が存在する。

 生まれた時点でその選別は始まり、運と一言で片付けるにはあまりに不平等な現実がある。

 しかし、その境界線は実に不鮮明で、意識していないだけで常にすぐ側にあるのだ。

 その薄い硝子がらすのような壁が、いつ壊れてなくなるかなど、誰も想像しない。

 昨日が平和であれば今日も、明日もまた同じ日々が続いて行くと漠然と考えている。

 あゆらもその一人だった。

 あの場面に遭遇するまでは——。

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