日記

もちこ先生

日記

母:これは私が生きた証

母:私の思い出

母:今日から日記を書くことにしました

母:なんでって、病院での生活暇なんだもん

母:私がちゃんと生きた証を残したくて、日記を書こうと思った

母:一月十四日、私はここの病院に入院した

母:病名は胃がん

母:ちゃんとバランスの取れた食事もして

母:健康的な生活をしてたはずなのに、おかしいなー

母:今日は、お父さんがお見舞いに来てくれた

母:体調はどうだ?って心配そうに聞いてくるあなた

母:私は、大丈夫って答えた。その答えにあなたはちょっと怖い顔をしてたね

母:やっぱり何年も一緒に生活してる人には嘘ってすぐバレちゃうんだね

母:でも、昔からあなたはお見舞いに持ってくる品物のセンスないわよね

母:今日は、暇だろうからって本を持ってきてくれたけど

母:戦国将軍のお話ってなによ

母:あなたの好きなものを、お見舞いに持ってこないでよ

母:本全部読んだけど、ちんぷんかんぷんだったよ

母:でも、あなたの満足そうな顔可愛かったなー

母:あなたとの出会いは、大学生の頃だったよね

母:友達がいなくて、一人で授業を受けてた私に、初めて声をかけてくれたのはあなただったね

母:嬉しかった。

母:最初はギクシャクして、沈黙の時間も多かったけど

母:隣にあなたがいてくれただけで、ほんとに嬉しかった。

母:それから、4年後にあなたから「結婚してください」って緊張しながら言ってくれたよね

母:私は、泣きながら「はい」って答えました。

母:一番あなたが緊張してたはずなのにね。「はい」って返事したあと

母:私もすごく恥ずかしくなったのを今でも覚えてるよ

母:同棲するようになって、最初の一年はほんとにうまくいかなかったね

母:些細なことで喧嘩して、その度に私が家出して

母:その度にあなたは、私を追いかけてくれて

母:必死そうな顔して「ごめん」って言ってくれたね

母:私も、全力の「ごめん」を返したね

母:ある日の夜、急に吐き気がしてまさかと思って検査したら

母:子供ができたの印が目の前にあった

母:ほんとに嬉しくて、すぐに言いたかったけど

母:焦らして焦らして、あなたには教えたよね

母:あの時のあなたの顔、ほんとに面白かったよ

母:そして生まれたのが、私たちの最初で最後の子供、桜

母:桜が生まれてから、ほんとに生活がガラリと変わって

母:子育てってほんとに大変なんだなーって実感した

母:桜は、すぐ熱が出てその度に夜中の病院で診てもらって

母:お医者さんから、「大丈夫ですよ」って言われて安心して

母:おむつ交換も、乳児食も最初から勉強して

母:二人で子育て頑張ってきたよね

母:桜も今は中学生、ほんとに大きくなったね

母:これから高校生になるときに、その姿が見れないのが残念だな〜

母:桜はほんとにいい子。真面目な子

母:家のお手伝いもちゃんとしてくれて、ありがとう

母:桜は覚えてるか分からないけど

母:人は死んだらどうなるかってお話ししたことあったよね

母:人は死んだらね。綺麗なお星様になるんだよ

母:夜空には数えきれないほどのお星様があるよね

母:あれは天国に旅立った人たちなんだよ

母:お母さんは、これからあそこの人たちの仲間入りをします

母:でもね、心配しないでね

母:寂しくなったら、夜星空を見てごらん

母:お母さん、どの星よりもキラキラ光ってここだよーって教えてあげるから

母:きっと桜なら見つけてくれるよね

母:見つけてくれなかったら、夜おばけになって寝てる桜起こしちゃうから

母:あれ、日記のつもりが日記じゃなくなってるわね

母:まあいいか。

母:お母さん、この続き書くつもりなかったし

母:え?なんでって

母:お父さんと桜には私から宿題を出します

母:次、3人が生まれ変わってまた3人家族になるまで

母:この日記帳を書き続けてください

母:二人の家族の物語、ここに書いてくれれば私は

母:二人のことわかるし、思い出も残るよね

母:お父さん、桜をよろしくね

母:桜、たくさん失敗してたくさん泣いて強くなりなさい

母:二人のこと大好きだよ

母:じゃあ、ここから先は二人の番だよ

母:楽しみにしてるわね

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日記 もちこ先生 @torotoromoro

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