筋肉不要論
海星めりい
筋肉不要論
現代における筋肉の定義から考えてみたい。
このサイバネティック技術全盛期ともいえる現代において、人間の筋肉というものは必ずしも必要である――とは言えなくなってきている。
宇宙での生活が多くなった人類において、必要なのは適切なサイバネティック技術を選択し、日々の利便性を向上させることにこそある。
脳波によって動かされるバックパック式多腕、悪路であっても気にせずに歩行できる着脱式レッグアーマーなど、すでに生身の筋肉を必要とする時代は終わりを告げているのである。
加えて、すでに研究し尽くされたとも言われるドローン技術を駆使すれば、輸送などにおいても生身の筋肉を使うことなどまずあり得ないと言っていいだろう。
筋肉などいかに不要か理解出来たと思うが、まだ話は終わらない。
実は戦闘に置いても同様なのだ。宇宙空間における戦闘において、筋肉が役に立つことはまずない。基本は宇宙艦同士による砲撃戦だからだ。
接近状態や奇襲ならば宇宙戦闘機による攻撃もあり得るだろう。宇宙戦闘機は艦内から遠隔で操られるので人間が乗り込む必要が無い。
地上での戦闘も似たようなものだ。
したがって、筋肉というのは現代において不必要である。
Q.E.D.
**********
「――と、俺は思うので筋トレとかまったくしなくていいと思います」
『長々と語っていましたが、結論はそれですか? バカ言ってないで、さっさと腹筋と腕立てをして下さい、マスター?』
俺の高尚な筋肉不要論をAIであるコイツにあっさりと否定されてしまう。
コイツの操作するアームに足を押さえられながらも腹筋なんぞしてたまるかという、強い意志を持って動かない。
『はぁ、困ったマスターですね。では、まずその歪んだ考えを否定します。現在のサイバネティック技術は筋肉を補助するためのものです。筋肉が少なくても済みますが動かすのに最低値はいるのです。艦内での基礎筋トレすら嫌がるのでしたら、2Gでのトレーニングが出来るジムに叩き込みましょうか? きっと私なんかよりも素晴らしい筋肉を持つ方々に手取り足取りしごいてもらえますよ?』
「そ、それはいやだ!?」
2Gのトレーニングジムなんか鍛えることにしか興味のない脳筋マッチョしかいないとこじゃねえか!? 同じ体格になるまで筋トレされ続けてしまう!?
『でしたら、頑張りましょう。はい、一回目!』
「ち、ちくしょー!?」
AIの声を聞きながら、俺は一心不乱に筋トレをするのだった。
「も、もう無理――……」
『れ、連続一〇回出来ないのはさすがに予想外です……』
筋肉不要論 海星めりい @raiki
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