イイタイホーダイ(仮題)

舌の根って乾かなくね？

　「......何急に言い出すかと思えば、あれでしょ？「舌の根が乾かないうちに～」とか、そういうちょっと賢い言葉使うドラマとかマンガ見たんでしょ？」

「そうそう、何で観たのかは忘れたんだけど覚えてる。印象に残ったんだよねー」　「ならせめてドラマや漫画の名前とか、どんなシーンだったか～とか、そっち覚えてないの不思議でならないんだけど？なんで？」

「いやー、ね？そっちよりも「舌の根」のほうが気になっちゃってしょうがなくなっちゃったんだよマジで」

「牛タン切り落とすときのタンの根本とかそういうやつ？」

「いや、部位の話じゃなくて。なんで「舌の根」が「乾くもの」として認識されてんのかがわっかんねぇのよ。意味不」

「む、そういわれてみればそうだわ。なんで「舌の根が乾く」っていう表現になるのかがちょっと疑問に思えてきた。乾く前提で話がされてるのがおかしい」

「だろぉ？舌の世界で一番乾かなそうなところが乾くときってどういうときなんだ？って考えたらもう夜しか眠れなくてさ」

「......健康的でよろしい」

「んでさ、思ったんだけどさ、舌の根が乾くときってさ、人が死ぬときだけなんじゃねぇの？って。ってことはこれ、間接的に「死ねよオマエ」って言ってることになるんじゃねぇかなって！」

「途中までは納得しかけてたのにどうしてそうなるんだ。急に「ノータリン」になるんじゃないよほんとに」

「だって実際そうだし。ってか考えたところでそれしか考えられなくねぇか？死んだあとくらいしか乾かなそうじゃん？あといつだよ、乾くの」

「口の中が乾くとは言うけど、舌の根は実際乾かないよね......なんでそもそも舌の根って指定してんだろ」

「のどちんことかにしとけよな」

「急にどうした」

「だって明らかにのどちんこ全体の方が舌全体よりも空気に触れてるじゃん？乾くんだったらそっちだろ」

「頭皮なら乾きっぱじゃねぇか？乾かさないと気持ち悪いし」

「頭皮かぁ、ケアは大事だもんな」

「シャンプーとリンス使って洗ったのに乾かさないだけでダメになりやがるのマジでどうかしてるよな......」

「じゃあ頭皮が乾かないうちに、ってことでおk？」

「いや、本家に寄せると髪の根だな」

「あぁ、表記の問題？どうする？」

「ってかひっくり返すようで悪いけど、頭皮が乾こうが乾かまいが口は動くぞ？」

「たしかに。ドライヤーしながら歌えるもんな」

「結局代用できなさそう......待って、目は？目ならどう？」

「目？なんで？」

「ドライアイ。乾くだろ。しかも濡れてるじゃん。そのうえ、死んだら間違いなく乾くぞ。完璧じゃね？」

「確かに、人間って6から7割が視覚情報に頼ってるだかどうだかって、テレビで聞いたことあるぞ」

「急に頭良くなるのやめてくれ心臓に悪い」

「......目が乾かないうちに、か」

「目薬させば済んじゃうけどな」

「それ持ち出されたら舌の根も飲み物1杯で片付いちゃうぞ」

「なんだよ！ズルする方法いくらでもあるじゃんかよ！」

「なんなんだよ舌の根問題......」

「先生に聞く？」

「たぶん鼻で笑われるぞ」

「......鼻では笑えなくね？」

「それは......たしかに」

「うわー！新たな謎がー！」

「大問題じゃないか......」

「なんなんだよこれー！」

ごはんできたわよー！

「はーい」