だって、君が「お願い♡」したから

華川とうふ

「私アイドルになることになったの……だからその前に……」

「あー、もうっ。怠い……ダメ」

 そういって、美織はベッドに体を投げ出した。


 白い肌に、マシュマロのようにふわふわとした部屋着姿の彼女はいつもより色っぽく見えた。

 美織ってこんなに可愛かったけ?

 俺は思わずそんな風に思って目を反らした。

 幼馴染といっていいのかはわからないけれど、美織のことは幼稚園のころからしっている。

 こうして高校生になっても放課後を一緒に過ごすくらい仲がいい。

 まわりには「腐れ縁」なんていっているが、まんざらでもないし、心地のいい関係だ。


 そんな俺と美織の関係が変わったのは昨夜のことだった。


「話があるの……」

「なんだよ、急に。どうした?」


 いつになく、美織が真剣に切り出したのですこしびびった。

 だけれどそのあとの美織の行動はもっと俺を驚かせた。美織は俺に抱き着いたんだ。

 いつもよりさわやかで甘い匂いがした。

 そして美織は俺に告白した。


「わたしね、アイドルになるの」


 昔から、キラキラしたアイドルを応援することが好きなのは知っていたが、まさか自分でなりたいと思っていなかったから意外だった。


「だからお願い……」


 美織は俺の耳にそっと、アイドルになる前の彼女のお願いを囁いた。

 桜色の唇が耳元でそっと動くと、吐息がぞわぞわと俺の知らない感覚をくすぐった。


 昨夜のことを思い出しただけで、みょうな快感が背中を駆け巡る。


「昨日、はげしかったね」


 美織は頬を赤らめながらいった。


「もっと、する……?」


 俺が聞くと、美織はこくりと頷き、床に横たわった。


「あんまり、きついのはいやよ?」


 美織はおねだりするような甘えた声をだす。


「いや、はげしくしないと。昨日とは違った風にもっと激しく……」


 俺はにやりと笑う。


 それから数分後。


「ああ、もうだめ」


 美織は苦しそうに言った。

 美織は必死に腹筋を鍛える姿勢をとっていた。

 アイドルには筋肉が必要だから鍛えてほしい。そうお願いした、美織が悪い。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

だって、君が「お願い♡」したから 華川とうふ @hayakawa5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ