第63話 答え合わせ

 

「――ま、待ってくだひゃい! あっ、す、すみません! 勝手に手を――」


 三島は慌てて俺から手を離す。

 そして、勇気を振り絞るようにして尋ねてきた。


「あ、あのっ! アイドル、お嫌いなんですか? その、すぐにやめられてしまっていたので……」


 三島がどうしても聞きたかったのはそれか。

 きっと、答え合わせがしたかったのだろう。

 三島は三島で『X』のことを考えてくれてたから。


 そのことを思い出すと、少し嬉しく思いつつ俺は答える。


「ううん、好きだよ。でも僕はアイドルをするのが好きなんじゃなくて、アイドルが笑ってるのを見るのが好きなんだ、お客さんと一緒に楽しそうに笑ってるのを見るのが……」


 俺の答えを聞くと、三島はようやく自然な笑顔で微笑んだ。


「……そう、だったんですね。うん……良く分かりました」


 せっかくなので、俺は三島にもエールを送る。


「君も凄く可愛いから、アイドルになったらきっとステージで輝けると思うな」


「か、かか、かわっ!?」


 三島は頭から煙を出して、完全にフリーズしてしまった。

 ……川? 行きたいの? 大雨の後は危ないぞ。


「えっと……それじゃ、アイドル活動頑張ってね」


 もう聞こえていないだろう、上の空状態の三島にそう告げるとリビングから出て扉を閉めた。


 ――俺は急いで脱衣所に戻り、軽くシャワーを浴びる。

 ワックスで髪に自力のパーマをかけると、冴えない眼鏡姿の杉浦に戻った。

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