第12話 2次試験、勝ち確です
グラサン試験官は腕を組むと説明を始めた。
「1次試験の結果はそのまま引継がれる。つまり、全試験の総合点で最終的な合否が決まる。今1位の奴は合格にもっとも近く、最下位の奴は合格が厳しいということだな」
なるほど……じゃあ、29位の俺も合格がかなり厳しいことになる。
最下位だった雪華さんは今の説明を聞いて半分泣きかけてるけど。
「2次試験は女性のアイドルの候補生と合同で行う。雑誌のカバー撮影だ。アイドルにはこちらで指定した衣装を全員
2次試験は雑誌のカバー撮影……
実際に雑誌の撮影をするのはプロのカメラマンかもしれないが、プロデュサーである以上アイドルを魅力的に撮影することは必須スキルだ。
アイドルとのコミュニケーション能力も含めてそこを審査するのだろう。
「質問はあるか?」
「被写体となるアイドルはどうやって決まるんですか?」
「好きな人同士で二人組を作ってくださ~い。ではなく、くじ引きだ」
グラサンの冗談で何人かの候補生が一瞬表情を歪ませた。
余り物になるトラウマがあるのだろう、分かる。
「くじ引きかぁ~」
誰かがそう呟く。
この瞬間、俺は全員の言いたいことが分かった。
(写真撮られるのが上手いアイドルと当たりてぇ~!!)
もちろん、俺もそうだ。
撮影中の採点は被写体が誰であろうと自分の実力だ。
しかし、最後に試験官が1枚ずつ選んだ雑誌のカバーが得点になるのだ。
自然な笑顔、自然なポーズ、普段から自撮りなどで写真に撮られ慣れている子だと有難い。
「それじゃ、クジを渡す。番号札を取ったら隣の控室にいるアイドルが着けているナンバープレートの数字と同じ奴同士で組め」
俺たちは番号の書かれた紙を取って控室へと移動した。
そこには、すでに撮影用のアイドル衣装を着たアイドルたちが撮影用のポーズを考えながら待っていた。
(撮影用の衣装、結構露出が多いな……緊張はアイドルに伝わってしまうから、できるだけ平常心平常心……憎き両親の顔を思い出せ……)
「「――うぉぉぉ~!」」
俺が自分の煩悩と戦っていると、何やら部屋の隅で歓声が上がった。
誰かの衣装が外れてしまったのだろうか。
それはいけない、プロデューサーとしていち早く手助けに行かなくては。
俺がそんな正義心で駆けつけると、歓声の輪の中心には銀髪の綺麗なアイドルがいた。
周囲の様子など気にも留めずに落ち着き払って雑誌を読んでいる。
「中学生ナンバーワン読者モデルの『花宮れいな』じゃねぇか!」
「あんなのと組めたら2次試験は勝ち確だぜ?」
「俺の番号は……くそっ! ちげぇ!」
(『花宮れいな』……そういえば今年で高校生か。確かに彼女はカメラ慣れしているし、組めたら楽だろうなぁ)
そんなことを思いながら、俺は自分のクジの番号を見る。
『16』と書いてあった。
俺は早速周囲を見回す。
早く接触してコミュニケーションをとった方が良い。
しかし、周囲を見まわしても16番は見つからなかった。
(16……16……あった!)
そして俺は見つけた。
花宮れいなを見てから、周囲を見回して丁度クルリと一回転。
つまり……。
「じゅ、16番……!?」
俺がそう呟くと、同じ番号札を付けた彼女――花宮れいなはスタスタと歩いて来て俺に微笑む。
「良かったわね、貴方。私が被写体なんだから、2次試験は勝ち確よ」
勝ち確です。
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