幼馴染

まるべー

第1話

「ふんっ!56,562!ふんっ!56,563!」


床で一生懸命に腕立て伏せをする幼馴染。この女の子が、俺たちの通う学校の学年一のアイドルだと言われても、到底信じたくない光景である。













「ふっ!60,000っと。いや〜、いつも手伝ってくれてありがとうね。智也ともや


彼女、大隅由紀おおすみゆきは腕立て伏せをを60,000回終えると、背中に乗って負荷をかけていた俺に礼を言った。


「いや、それは別に大丈夫なんだけど…」


「けど?」


「いや、よく60,000回も腕立てできるなって思ってさ」


俺はそう思ったことを口に出しながら汗拭き用のタオルを由紀に渡す。


「ああ、ありがと」


タオルを受け取り、汗を拭き出す由紀。それにしても、いくら幼馴染でずっと昔からいるからと言って、その刺激的な服はちょっとやめてほしい。いや、運動に適しているってことはわかってるんだけどね。


彼女の服装は上はタンクトップ一枚のみだ。しかも、ノーブラだからか、汗を拭くたびに胸元が強調されてしまうのである。


「まあ、これくらい普通じゃない?私なんてまだまだだよ〜」


「そっか……」


どう考えてもこれよりも多い回数をこなしている人はいないと思うのだが……。


まあ、今更そんなこと気にするだけ無駄だろう。こいつはそういう奴なのだ。


「それじゃ、私はシャワー浴びてくるわ」


由紀はそう言って立ち上がると、そのまま風呂場の方へと歩いていった。


そして、数分後、シャワーを終えた由紀が戻ってきた。


「お待たせー!」


「おう、おかえり」


由紀は濡れた髪を乾かすためにドライヤーを手に取ると、コンセントにプラグを差し込んだ。


そして、スイッチを入れるとブォーンという音とともに熱風が出てくる。


「よしっ!これでOKかな!」


由紀は髪が完全に乾いたことを確認すると、満足そうな顔を浮かべながらこちらを見た。


「んじゃ、俺はそろそろ帰ろうかな」


「もう?っていっても、こんな時間か。別に今日は泊まってってもいいんだよ。幼馴染だし」


「いや、やめておくよ。由紀の親もそろそろ帰ってくるし、俺の親もそろそろ帰らないと怒るしな」


時刻はすでに夜の9時を回っている。高校生が出歩くには少し遅い時間帯だ。


「んじゃ、また明日学校でな」


「うん!バイバーイ!」













「やっぱり、筋肉質な女の子は好きじゃないってこと、なのかな?ふふっ、まあ、いいや。次は強引にでも…」

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幼馴染 まるべー @marub

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