学生トーク「筋肉編」

山田 武

学生トーク「筋肉編」



「筋肉について何だが……どう思う?」


「特に何も……しいて言うなら、あったら便利なもの?」


「もうちょっとこう、無いか?」


「いやまあ、鍛えている連中なら浮かばなくもないだろうけど……俺たちはなぁ」


 友人の話に対し、盛り上がれない少年。

 自分と友人を見てみても、そこにボディビルダーのような仕上がった筋肉は無い。


「まあ、筋肉は必要不可欠だよな。少なくとも、こうやって生きているのには絶対無いとダメなものだな」


「理科室の模型を思い出すけど、全身のほぼ全部筋肉だしな……人によっては、耳も動かせるんだっけ?」


「進化がどうとか、そんな話をテレビで昔してた気がするな。まあ、それはいいけど……そういえば、なんで筋肉って字が当てられているんだろうな」


「おっ、調べてくれよ」


 いつものようにスマホを使い、さっそく調べてみる少年。

 なお、最近の履歴は「○○ 定義」が多くなっている。


「これかな……筋肉ってのは、要するにこうやって体を動かすときに使う部分のこと全部みたいだな。ちなみに『筋』単体で筋肉っていうみたいだけど、たぶん肉でもあるから筋肉って呼ぶのかも」


「へー、じゃあ脳みそも筋肉なのか? いわゆる脳筋ってアレ」


「…………あー、これかなり難しいな。筋肉にはいくつか種類があるみたいなんだが、脳みそにはその体を動かす系の筋肉は無いみたいなんだ。ただ、血管系の筋肉はあるから、そういった意味じゃいちおうあるんだ」


「うわ、面倒臭い」


 お前が言ったんだろ、というツッコミを目でするだけでグッと堪える少年。

 それを知ってか知らずか、友人は話題を別の物に。


「じゃあじゃあ、筋肉と言えばやっぱりアレだろ! ほら、こうポーズ決めるヤツ!」


「ボディビルか。たださあ、ポーズは調べれば分かるけど……やっても虚しくなるだけだろ? 嫌だぞ、俺。絶対周りの連中が何か言うんだから」


「…………止めるか」


 初めに語った通り、彼らの筋肉はそれこそ中肉中背程度。

 仕上がっていない、鍛え上げられてもいない筋肉でその話題を進める勇気は無かった。


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