強靭無敵!筋肉リアクティブアーマー!

奈名瀬

強靭無敵!筋肉リアクティブアーマー!

 苔色の肌を持つ小柄な怪物、ゴブリン。

 奴の錆び付いた剣を鍛え上げた筋肉へと振り下ろされた瞬間、閃光が迸った!

 直後、巨大な爆発!

 周囲を赤黒い爆炎が包み、白い土煙も舞い上がる。

 そして、爆発が収まった後……ゴブリンは跡形もなく消し飛んでいた。


 ついでに、装備していた鎧やパンツもだ。


「……やっぱ、鉄の鎧でも消し飛んじまうんだな」


 思わずため息が出る中、戦闘前に放り投げていた鞄の元へ着替えを取りに行く。

 新しい下着を履きながら思い出すのは、俺を異世界へと送り出した女神の言葉だった。


 『あ! 自爆機能も付けておきますね! もちろんコレは、サービスですっ☆』


「あの女、やっぱり地雷だったじゃねぇか」


 どこかで『地雷じゃなくて自爆の女神です』と叫ばれたような気がした。


 最初に、『異世界へ送る際に女神が与えられる能力はひとつ』と聞かされていた筈なのだが、能力をふたつ与えられたことは果たして幸運だったのだろうか? 


「…………」


 パンツ一丁になった自分の姿を見て、答えは出た。


「……はぁ」


 だが、落ち込んでばかりもいられない。

 魔王を倒し、妹が待つ元の世界へ帰らなければならないのだ。

 そのためにも――、


「上手く使わねぇと……」


 ――与えられたふたつの能力と向き合わねば。

 頬を叩いて気合を入れ、ひとまず拠点へ戻ることにした。


 俺に与えられた能力はふたつ。

 一つは、命……つまりHPがなくなった瞬間に体が爆発する『自爆』。

 そして、筋肉……いや、筋繊維のひとつひとつへ与えられたHPによってもたらされる無尽蔵の『体力タフネス』だ。

 『不死身にしてくれ』と頼めれば良かったのだが……できないと言われ、無い知恵を絞った結果、『筋繊維の数だけ命があれば易々と死ぬことはない』なんて答えにたどり着いたのだが。


「なんだか、想像してたのとずいぶん違うなぁ」


 ぽつりとこぼれた言葉に対して、当然ながら筋肉は何も答えてくれなかった。

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