61.香辛料たっぷり!

 アグレイアの遺産を受け取ったセナは、装備できるものはその場で装備することにした。

 現在のセナのステータスは、このダンジョンに挑戦する前と比べるとかなり高くなっており、ついでにステータスの確認も行う。


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『セナ』レベル71

“猛威を振るう疫病にして薬毒の神”の信徒

└【疫病の加護】

ジョブ:“疫病と薬毒司りし女神の慈悲無き狩人”

└《クルーエルハント》《プレイグスプレッド》


スキル:

【ダークテイマー】 【ボウハンター】

【真・短剣術】 【投擲術】

【猛毒化】 【真・魔力付与】

【狩人の目】 【採取術】

【調合師】 【木工師】


アーツ:

《テイム》《自爆命令》《キャスリング》

《ライフコントロール》《視界共有》

《ペネトレイトシュート》《プレイグシュート》

《ボムズアロー》《プレイグポイゾ》

《マナエンチャント》《ハンターズアイ》

《コレクション》《プロダクション》

《クリティカルダガー》《投擲》


従魔:

『ホーンラビット』レベル57

『ヴォーパルバニー』レベル56

『グレーターセンチピード』レベル56

『レギオン』レベル53

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 レベル以外にあまり変化は無い。アーツが一つ増えたぐらいだ。

 そして装備欄はこうなっている。


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通常装備

├セナの短弓(オリジナル)

├『ジジの短剣』

├『始原魔法の矢筒』

└『色褪せた古の狩人装束』

 └頭、胴、腕、腰、脚、靴


装飾品

├【ジゼルの耳飾り】

├『魔宝石の腕輪』

├【ニーチェの腕輪】

├【リムリスの指環】

├【アルバートの指環】

├『古・魔宝石の指輪』

├『古・魔宝石の指輪』

├『古・ルーンの指輪(技巧)』

└【トゥータのアンクレット】


特殊装備品

├【アゼムの刃】

├【無垢なる光】

└【規則の聖痕】

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 装備品がたくさん増えたので、画面もそのぶん縦長になっている。

 文字がずらりと並んでいると普通は目が疲れてくるが、セナはとっくに慣れているのでぱぱっと詳細にも目を通す。


 これだけあるとステータス補正もかなりのものだ。一つ一つは小さな補正でも、塵も積もれば山となる。


 だが、この装備一覧の中でも一際目立つのが特殊装備品だ。

 他の装備と異なり、ステータス補正が皆無な代わりに強力な効果や特殊な効果を持っている。

 

 右手の甲にある【規則の聖痕】は、【無垢の聖痕】というアイテムにシャリアの力を込めた特殊装備品だ。これは彼女が用いる規則を上書きする効果を、小規模に限り発動出来る。

 なお制限として、一〇回使用すると一週間使用不可になる。


 セナの背後に浮遊している光輪は【無垢なる光】で、これもまた特殊な効果を持つ装備品だ。効果の内容は信仰の増加となっており、神へ捧げ物をした際に得られる加護やジョブの強化量が増えるというものである。

 光がちょっと……いやかなり邪魔なのでエフェクトを切ったら、セナの視界には映らなくなった。が、他の人には見えているらしい。


「(レベル71か……次はどこに行こう)」


 シャリアの魔塔での激戦をくぐり抜けたお陰で、セナのレベルは一気に上昇している。

 ラゼータどころか次の街、更にその次のフィールドでも経験値は得られない予感がする。


 何かモンスターが高レベルでいい狩り場になりそうな場所は……と考えたところで、広場に掲示されている地図が目に入った。

 ここラゼータ周辺の街道などが記載されているその地図には、王都方面とはまた別のルートが存在している。


 地図を見る限りだと、このルートは砂漠を通らなければならないようだ。


「(砂漠はちょっとなぁ……)」


 セナはあまり乗り気じゃない。

 そもそも砂漠はとても過酷なフィールドだ。昼は暑く、夜は寒い。対策をしてないと参ってしまう。


 ここラゼータの店で砂漠対策の道具が売ってる様子も無いので、大人しく王都に向かうことにする。


「……あ、レギオンあれ食べたい」


 広場を抜け街の門に足を進めていると、レギオンが立ち止まって指を指した。

 その先には屋台が何件もあり、レギオンの視線が向いている店は『香辛料たっぷり!』の看板が掲げられている。

 覗いてみると、他の店の二倍近い値段で串が販売されていた。


「おう嬢ちゃん! 何か買っていくか? オレの串焼きは香辛料たっぷり! 激辛だぜ!」

「激辛……」


 そう言えば、激辛を謳う料理は食べたことが無い。

 よく食べるのは空腹ゲージの回復を優先したものばかりで、味は二の次と考えていた。

 しかし、レギオンには美味しいものを美味しいと感じる味覚がある。

 よだれを垂らし、目を輝かせ、餌を前に待てをされている犬のようだ。


「……じゃあ、二本ください」

「まいど!」


 お金を渡して焼きたての串を貰う。

 一本をレギオンに渡すと、彼女は喜んで頬張った。


「(なにこれ、痛い。口の中がヒリヒリする……)」


 が、セナの口には合わなかった。

 買ったものを粗末にするのは良心に反するのでなんとか食べきったが、今後激辛を謳う料理は食べないことにしようとセナは決意する。


「マスター、マスター、レギオンもっと食べたい! これくらいちょうだい!」


 両手を広げるのみならず、影から手を生やしてまで数を要求するレギオン。合計で三〇だ。


「…………三〇本ください」

「まいど! そっちの嬢ちゃんは従魔なんだな、気に入ってくれて嬉しいぜ! ちょっと待ってな」


 香辛料をまぶしながらじっくりと焼き上げた串焼き。その香ばしくも刺激的な香りが広がり、セナは思わず鼻を押さえた。


「ははっ、嬢ちゃんは苦手な口か!」


 笑いながら三〇本の串焼きを渡され、セナはそれをレギオンが受け取るように身振り手振りで指示した。

 レギオンはとても嬉しそうに大量の串焼きを貰って、一つずつ頬張っては声にならない歓喜を上げる。


「(感情が豊かになったなぁ……最初はあんなに無機質だったのに)」


 セナの身長を少し超えた辺りで成長がストップしているレギオンに、何か温かい感情を覚えるセナ。

 友情か、親愛か、それともまた違う何かか。

 よく分からないが、レギオンが嬉しそうにしていると楽しく感じる。

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