29.レギオンは大きくなりたい

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『レギオン』レベル10

分類:キメラ


【拡大本能】【影之魔物】【蟲之魔物】【獣之魔物】【供贄】

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 ガンマリードに戻る道中で、セナはレギオンのステータスを確認した。【テイマー】スキルを持っている場合、プレイヤーは従魔のステータスも見れるのだ。

 レギオンのステータスは他三匹と違って、多くのスキルが表示されている。

 しかし、それはスキルというよりは使われた材料と言うべきで……。


「(【拡大本能】以外は材料っぽいね。【供贄】はなんだろう……)」


 【影之魔物】【蟲之魔物】【獣之魔物】は分かりやすいが、セナは【供贄】の意味が分からなかった。

 詳細を開いてもスキルとしての効果が表示されるだけで、基になったモノまでは教えてくれない。


 それよりも、セナはレギオンに確認するべきことがあった。


「ねえ、レギオンってどんなモンスターなの? 見た目は人と同じだけど」

「……? レギオンはレギオン。今は小さいけど、もっと大きくなる。今はマスターのレギオン」


 しかし、レギオンはモンスターであるため、返ってきた答えは要領を得ないものである。


「そういうことじゃなくて……」


 セナはなんて訊くべきか悩んだ。

 すると、レギオンは首を傾げてこう言った。


「レギオンはレギオン。たくさんいて、でも今は少ない。だから大きくなりたい」

「(たくさんいて……?)…………もしかして、レギオンって群れ?」

「そうだよ?」


 そう、レギオンは群体だったのだ。

 単一の個体でありながら群体という矛盾した分類のレギオンは、モンスターとしてとても異質である。


 大きくなりたいは群れを拡大したいという意味であり、同時にもっと大人びた姿に成長したいという意味でもある。


 それから、ガンマリードに戻ったセナは、コルタナ地下遺跡で起きた出来事を報告した。

 クエスト自体はクリアした判定になっているが、報酬が現物支給のクエストの場合、依頼者の下まで行かないといけないのだ。

 技術の進歩は素晴らしいが、進歩しすぎて面倒なことまで再現してしまっている。


 ちなみに、レギオンはセナの近くにいることを望んだため、仕舞ったりせずそのまま連れて来た。


「……では、生命教団は壊滅したと」

「うん。最強のキメラもテイムしてきたし、大丈夫だと思うよ」


 組合員は不思議そうな顔でレギオンを見る。

 レギオンは現在、セナのお古である【くまくまヘッド】と初心者装備一式を着ているため、端から見るとただの人間なのだ。元々の造形もほぼ人間だったが、顔がフードで見えにくい分、余計に勘違いを起こしやすい。


「こちらで保存されている資料に、レギオンという名称のモンスターは載っていませんし、新種のキメラとして登録はしておきますが……」


 言外にモンスターには見えないと伝える組合員。


群れレギオンはまだまだ小さいから少しだけだけど、もっともっと大きくなればたくさんだよ」


 それに対して、レギオンは影の中から腕を生やしてモンスターという証明をした。


「だから、レギオンはモンスターだよ」

「…………はい、分かりました。本部にも連絡しておきます……」


 眉間を抑えて組合員は絞り出すように言う。

 一般的なキメラのイメージとかけ離れた姿のため、彼もレギオンをどう扱うべきか分からず混乱しているのだ。


 報告を終えたセナは懸賞金を受け取り、それから街の中を散歩することにした。


「レギオンはどうやって大きくなるの?」

「たくさん食べるとレギオンは大きくなる。成長すると大きくなる。だからたくさん食べさせて」


 両腕をばっと上げて、レギオンは食事を要求する。

 臨時収入とはいえかなりの額が手に入ったので、セナは適当な店で適当に食べ物を買ってレギオンに与えた。


「レギオン満足」


 大人でも食べきれない量の食事を平らげて、レギオンはとても満足そうには見えない無表情でそう言った。

 ちなみに、大半はレギオンの口ではなく影の中に収まった。


 セナは最初、人間体のほうを本体だと思っていたが、本人曰くどちらも本体なのだそう。

 人間体も影もレギオンの本体であり、一部でしかないと。


「マスターは満足?」

「……微妙?」


 セナは本物の食べ物を食べたことが無いので食事の良し悪しが分からない。美味しいと不味いの違いは分かるが、食べられるならどれも一緒ではないか? という考えがある。


「それより、レベリングがてら次の街に行こうと思ってるんだけど」


 食事を終えた二人は街の広場で次の行き先を模索する。

 有り難いことに広場には周辺地域の地図と隣街への街道が書かれた地図があるのだ。簡易的ではあるが、目印などもあるため分かりやすい。


 その地図によると、ガンマリードの西にはデルタリオンという街があるそうだ。

 北はベータリマ、南が未開の土地と記されている。


 となるとアルファディアの東の街が気になってくるが……。

 ベータリマやアルファディアはプレイヤーが多いだろうしと、NPCではない本物の人間相手だとぼっちを発揮するセナは、そちらに行く気が起きなかった。


「(それに、レベル的にも進んだ方が良さそうだし……)」


 今のセナのレベルとステータスでは、ガンマリード周辺のモンスターですら大した経験値にならないのだ。

 ガンマリードで出来そうなことも見つからないので、セナは補充だけ済ませてガンマリードを出立する。

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