21.スキル調整とコンボ
イベントが終了する。
効率よくダンジョンを周回したセナのポイントは合計で二〇万程度であり、レベル30帯の装備一式と交換すればすぐに無くなる。
しかし、セナは既にユニーククエストで有能な装備を入手しているため、交換するのは別のアイテムだ。
「昨日の人たちはなんだったんだろ。まあいいや、まずは〜……これ!」
最初に選んだのは技巧のクリスタルというアイテムである。
これは使用することでスキルを一つ取り直せるという、とてつもなく貴重なアイテムだ。
一つ交換するのに必要なポイントは五万程度で、交換限度は二つまでとなっている。
セナは二つとも交換した。
残りは全てシルバーに変換する。技巧のクリスタル以外に有用と思えるアイテムが無かったからだ。
「使い方は……これでいいのかな」
セナは技巧のクリスタルを手に持ち、それを握りしめる。
するとステータス画面が表示され、取り直すスキルを選ぶよう催促された。
「取り直すのはこれとこれで……どれにしようかな」
これまで一切役に立たなかった【使役獣強化】と【使役獣覚醒】が選択され、ステータス画面から削除される。
この二つのスキルは従魔の好感度が高くないと使えないため、キャラクリ時はともかく、今のセナからすれば無用の長物なのだ。
新たに選択するスキルの候補は幾つかある。
ジジから貰った短剣を活用するための【短剣術】、アイテムを投げる際に補正が入る【投擲】、武器が無くても戦える【モンク】、瞬時に罠を作成し設置できる【罠術】等など。
ジョブや加護、他スキルとのシナジーを考えれば、【投擲】はかなり有用だろう。
その場でアイテムを作成できる《プロダクション》で矢などの消耗品を作成し、そのアイテムを投擲すれば立派な攻撃手段になるのだから。
【短剣術】は【ソードマン】や【シーフ】で剣を扱う技能が得られるので下位互換にしか見えないが、これは短剣のみにリソースが割り振られているため、選択する余地は十分にある。
「……これにしよう!」
悩んだ結果、セナは【短剣術】と【投擲】で空いた二枠を埋めた。
新しく獲得した技能は《クリティカルダガー》と《投擲》の二つだ。
セナは冒険者組合の修練場を借りて、二つの技能の使い心地を確かめる。
「(《クリティカルダガー》は普通かな。近接専用の、急所特攻攻撃って感じ。《投擲》は……うん、これなら出来るかも)」
聖水は無いが、これまでの経験から二つの技能はアーツへと昇華した。
修練場で何回か使っただけで、セナはこれらを完璧に身につけたと判断されたからだ。
「とりあえず街の外に行かないと」
セナは頭の中で思いついたコンボを練習するため、一旦アルファディアの外に出る。
向かった先は西の森だ。
道中、セナは《プレイグポイゾ》と《マナエンチャント》で劇毒のポーションを作成し、《プロダクション》で量産する。
《プロダクション》で大量生産すると、持続時間が短くなったり耐久値が少なかったりするものの、手間が減るので消耗品の作成に便利なのだ。
西の森に出現するモンスターは総じて状態異常を与える能力を持っており、耐性も同レベル帯と比べると高めになっている。
セナが西の森に来た理由は、そのモンスターでなければコンボが試せないからだ。
正確には、試したとしても通じる最低ラインが分からないからである。
耐性がある相手に通じなければ、今は大丈夫でも役に立たなくなってしまう。
「まずはモンスターを見つけないと。……いたいた、じゃあこれを《投擲》」
作成した劇毒のポーションをアーツで投げつける。
《投擲》は投げたアイテムの命中時に、自身の攻撃力で判定を行う効果がある。
セナの攻撃力は装備のセット効果で上昇しているため、適当なアイテムでもクリティカルヒットすれば大ダメージになるだろう。
劇毒のポーションは触れただけで毒状態になるほどの毒性がある。
セナの《投擲》によって劇毒のポーションを投げつけられたモンスターは、その毒性への耐性を持っていたが抵抗できなかった。
「……よし!」
毒に冒されたモンスターは《投擲》とDOTのダメージで斃れる。
攻撃手段として十分な威力を発揮した。
コンボとしてはまだまだ不十分だが、より揮発性の高い毒物を作れるようになれば、罠として使うことも出来るだろう。
群れの中に《投擲》して一網打尽にも出来るはずだ。
セナはそう考えた。
そしてそれを実現するため、スキルを鍛えてアーツの種類を増やすためにも、強敵との戦いは必須となる。
「ここもボスモンスターがいるんだっけ。いるなら戦ってみようかな」
イベントのボスモンスターがアレだったのでそこまで強くはないかなと思いつつ、セナは森の奥へ向かう。
《コレクション》を使って植物や木の実を採取しながらだ。
遠くから戦闘音が聞こえるため、他のプレイヤーたちも向かっているのだろう。
セナは隠れながら木々の根が複雑に絡み合う森を進んでいった。
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