第32話 芦和良理人 1
——ピンポーン。インターホンの音に反応して、
「だから、もしも悪いやつだったらどうするんだよ。向こうに行ってろ」
「おお、どうしたんだ?」
「ふらっと立ち寄っただけだよ。
「居るが……」
「なんの用だ? 俺が聞いておくぜ?」
「いや、直接話したい。できれば、二人きりで出掛けたいんだ」
「もう4時過ぎじゃあねえか。保護者としてそれはお断りだ」
「彼女のためなんだけどね」
「また今度な」
「
「ん?」
「やけに冷たいね。いつもなら、まあ入れって言ってくれるのに」
二人で押し問答していると、
「あれ? リジンだ! おかえりー!」
「ただいま。じゃあお言葉に甘えて」
上がってこようとする
「
——ガラガラッ!
と豪快に掃き出し窓が開けられる音がした。
「
「そう言うお前もな」
葬儀屋の仮面をずらしたときに見えた、二重瞼の垂れ目が変わらずそこに在った。
「機関から伝わって来た情報とは齟齬があるけれど、ある程度の間違いは仕方ないか。それじゃあ」
「行かせねえよ」
「
「俺は
「言うと思ったよ。でも、僕は行く。離してくれないかな。君を傷付けたくないんだ」
「随分調子こいたこと言うじゃねえか!」
「あのね、
語気の荒い
「君は、弱いよ」
いつものやさしそうな表情はそのままに、垂れた目尻の先にほんのりと殺気を乗せている。なるほど仮面を被っているときはこんな表情をしていたのか、と呑気なことを考えていた。
不意に掴んでいた腕が持ち上がる。力を込めて押し返そうとするが、びくともしない。そのまま押し上げられ、体勢が崩れそうになったので手を離した。
(
ギリギリのところで拳を躱し、仰け反るようにして後退した。素手の拳なら、額で受ければ潰せる。だがそれは同時に、親友の指を複雑骨折させると言うことだ。
「いい判断だ。
口調が、葬儀屋のときのものに変わっていた。声は
彼の手を見ると、拳が解かれていた。開かれて、指がくの字に曲がっている。顎へのアッパーカットに見せかけた、掌底と目潰しの合わせ技に切り替わっていたのだ。あのまま額で受けようとしていたら、失明していた。
だがここは、
しかし
右、左、とウィービングをしながら距離を詰めた。
じりじりと距離はつまるものの、お互いに攻撃を仕掛けることはない。
今まで何度か戦ってわかったのは、
左手が空気を切り裂いて
「——があああっ!」
うめき声を漏らしながら壁に寄り掛かった
「ごめん
踵を返して走り去る
部屋の中に入り、スマフォを手に取る。もう迷っている暇はなかった。
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