おまけep108 まだ恋を知らない末っ子の恋心

 私の名前は末。中学3年生。


 私には少し年の離れた姉が二人いる。萌ちゃん、20歳と、妙ちゃん、22歳だ。

 たえ、もえ、と名付けた母親が、末っ子だからと私の名前を末にした。


 私は自分で言うのもなんだけど、フランス人形のように可愛いの。だから末なんて名前は似合わない。でも仕方ないから、カタカナでスエって呼んでって皆にはお願いしているの。


 萌ちゃんは、まぁ好きかな。スエ可愛いから、割とデレデレで甘やかしてはくれる。からかったりイタズラしてくるのがちょっとイヤ。あと、妙ちゃんの取り合いになるからライバルでもある。


 私がこの世で1番好きなのは、長女の妙ちゃん。物心ついたときには、妙ちゃんはもう中学に上がる頃だった。


「妙ちゃん、ちゅかれた。もうあゆけないから抱っこして?」

「いいよ、おいで?よいしょ。わーまだ末は軽いねー♡」


 綺麗で可愛いお姉ちゃん。いつも嫌がらずに抱っこしてくれた。すっごく良い匂いなんだ。


 あとね、私はフランス人形みたいだからって、皆が似合うものを勝手に決めつけるの。ずっとやってるピアノもママが似合うからって決めた。まぁ好きだからいいけど。


「このフリフリのレースがついた服が似合うね。」

「末ちゃんはピンクの小物ね。」

「末ちゃんはおままごと、お姫様ね。」


 って。誰一人、末が何を好きかなんて聞いてくれないの。


 妙ちゃんだけは違ったんだ。


「スエ、ジーパン履きたい。スカートばかりは嫌!」

「じゃあ、お姉ちゃんの小さくなったやつを履いてみようか?それで後で末に似合うやつを買いに行こう?」


 でもね、やっぱり履いてみると似合わないの。だけどね?


「あはは。末は可愛いからちょっと似合わないね…。そうだ!髪を縛ってあげる!きっとかっこよくなるよ!」

「ほんと?妙ちゃん、髪しばって?」


 そうやって、末のことをちゃんと見ててくれる人。なんでも似合うとか言わない。だから大好きなの。


「末の好きな色なーんだ?」

「んー、青でしょ?お絵かきするとき、いつも青から使ってる。」

「えへへ、せいかいでーす♡」

「次に好きな色は?」

「んっとね、オレンジ!」

「そっかぁ!じゃあ、青空にひまわりを描いてみるのは?」

「うん、描いてみる!隣りにいてね?」

「うん。描き終わったら妙ちゃんにくれる?」

「うん、あげる♡妙ちゃんも描いてあげる!」

「じゃあ、末も描かないと!」

「!!そうだね!一緒じゃないとね!」


 ふふっ、妙ちゃん、大好き。誰といるより楽しい。優しくて、可愛くって、末のことちゃんと見ててくれるお姉ちゃん♡


 だから、小学校のときは、妙ちゃんと結婚するって思ってた。ガサツな男の子は嫌い。文句ばっかり言ってる女の子も嫌い。妙ちゃんしか好きじゃない。


 ずっと、ずーっと、妙ちゃんといたいな。でも、、ついに妙ちゃんは、みちるさんと結婚しちゃった…。離れたお家で暮らしてる。


 すごく寂しくて、悲しくてショックだったけど、、

 でもね?みちるさんってすごくかわいいの。あんな人がお姉ちゃんになるなら、まぁ良いかって少し思ったんだ。でも妙ちゃんには敵わないし、、萌ちゃんよりも劣るわね。70点ってところ。


 だけど、最近…。


「末ちゃん♡今度、一緒にクッキーを焼かない?」

 みちるさんがこないだそう言ったの。また末はお菓子作りとか好きそうって思ったのかなって、、勝手だなって思ったんだけど…

「あのね、このクッキー、妙ちゃんが食べてみたいって言ってたの。だから、二人で作って驚かせたいなって。どうかな?」

 

 この人も、末がどう思うか、ちゃんと聞いてくれるの。


「妙ちゃんが食べたいなら作ってあげたい。みちるさんと一緒に作る…。」

「わ♡ありがとう!一人で作るより、末ちゃんと二人で、妙ちゃんの話をしながら作りたかったの!♡」


 わ、悪い気はしないわね…。


「妙ちゃんの、昔の写真…見せたげてもいいよ。。」

「え!いいの?末ちゃんも写ってるのが見たいな♡」

「うん、いいよ、、。」

「末ちゃんって、髪が長いじゃない?してみたい髪型ってある?私、いろいろ結べるの。」

「え、じゃ、じゃあ!かっこいいのしてみたい!」

「お?じゃあ、ロックな感じかな?♡それとも、萌ちゃんみたいにモデルっぽいのかなぁ?♡」

「あのね、スエ、本当はバンドやりたいの。ピアノやってるけど、ドラムとかギターとかが良かったの。」

「え、そうなんだ!じゃあ、高校で軽音に入るのもいいね♡でもさ、ピアノでロックやったらかっこいいかも。そういうバンドの動画、探してみてみよっか?♡」

「う、うん!観たい!!髪もロックっぽくしてくれる?」

「わかった♡めちゃかっこよくしよ♡」


 この人も、何でも似合うって言わない。これが似合うって言わない。それは似合わないって言わない。


「みちるさん…?」

「ん、なぁに?♡末ちゃん♡」


「…お姉ちゃんって呼ぶ、からね…。決定ね…。」


「うん!♡嬉しい!♡ハグして良い?♡」


「いいよ、、ちょっとね?」


「はーい♡ぎゅーーーっ!♡あ~めんこいね♡」


 この人も、いい匂い。柔らかい。優しい。



 好き。かも。



 末がみちるにデレだしたのは、この日から割とすぐだったという。


 みちる「今では会うと、服の中に手を入れられます。あいつは変態です。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る