第134話 夜明けと共に
一方、ゆまは部屋に入った後すぐにため息を吐いて蹲った。
(道弥、凄かったな……。まだ四級の私でも分かる圧倒的凄さ。私とはレベルが違った。あんな凄い人に陰陽師とは何か、とか語っちゃったよ。死にたい……)
ゆまの脳内をネガティブなイメージが支配する。
(あんなに凄かったら、私なんて中途半端に見えるよね。もう全部道弥に任せちゃえば……いや、それじゃ駄目! あの旧鼠には負けちゃってるから、このままじゃろくな動画がない。これじゃ使われない!)
ゆまは頭を振る。
(せっかく来たチャンスなんだから……なんとしても活躍しないと。必ず私がグループで一番を取る。取らないと……なんのためにここまで)
ゆまは決意を新たにしていた。
島の中央にある山の奥深く、道弥が倒した旧鼠より一回り大きな旧鼠の長と共に居る妖怪が居た。
すらりとした男の姿をしており、顔は長い髪で隠れている。だが手には人には不釣り合いなほど巨大は爪が輝いている。
その側には人骨が転がっていた。
男は顔を歪めながら、大きな爪で顎をさする。
(島を躯で埋め尽くしあの方への捧げ物にしようと思ったのに……邪魔が入るとは。陰陽師か、妖怪か。どのレベルの者が来た? 分からんが……長時間連絡がないことを考えると、廃校を縄張りにしていた奴等は全滅したとみていいな)
男は旧鼠を祓った者について測りかねていた。
(村人達が陰陽師を呼んだとしても、そこまでではないだろう)
「予定より速いが、動くか。おい、旧鼠。皆を起こせ。明日、島民を襲う」
男の言葉を聞き、旧鼠の長は静かに体を起こす。
妖怪達も静かに動き始めた。
◇◇◇
翌日、俺達は宿を出て山へ向かう。
ゆまはこちらを見ると、意を決したように口を開く。
「あんたがいくら凄くても、態度なんて変えないんだから!」
「いや、別に変えなくていいよ」
なんの話だ?
俺は首を傾げる。
「そ、そう……」
俺の反応に驚いたのか、少しだけ沈黙したゆまであるが、すぐに元に戻る。
するとゆまのすぐそばにゆまの式神である弥胡が顕現する。
「ゆまに手なんて出したら許さないからね!」
弥胡は突然こちらを見て叫ぶ。
こいつらは式神も揃ってなんの話だ?
「あんたが強いのは分かったけど、ゆまはアイドル。今恋愛沙汰になったら……! 私心配で夜しか眠れないわ!」
夜寝られれば十分だろう。
ゆまに似て妄想癖がどうやらあるらしい。
「新米妖狐が誰に向かって口を利いているのかしら?」
その言葉を聞き振り返ると、そこには莉世が顕現していた。
やはり出てきてしまったか。
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