第88話 私が祓います
翌日。俺達は再び山へ向かう。
「昨日、お二人がだいぶん数を減らしてくれたので、今日は奥まで向かいます」
「「「「はい」」」」
佐渡さんを先頭に、俺達はどんどん山を登っていく。
「南西二百メートル先、中鬼が二匹」
「了解」
俺が真から聞いた妖怪の場所を皆に伝えると、皆すぐに臨戦態勢に入る。皆上級陰陽師なこともあり、速やかに妖怪を祓っていく。
優秀だな。本当に俺の出番はもうなさそうだ。
俺達を阻むことができる敵が現れることはなく、その後も順調に進む。
山に入って三時間、真が俺に告げる。
『主様、前方百メートル先から人間の気配が……。おそらく拉致された女性かと。すぐ近くに、妖怪もおりまする』
『人間は一人だけか?』
『はい。他の人間は見当たりません。おそらく敵はこちらに気付いています。周囲の妖怪と連動してこちらを囲む動きがみられます』
「皆さん、前方百メートル先に人間の気配があります。おそらく拉致された女性です。そして、周囲の妖怪と連携してこちらを囲む動きが。臨戦態勢を」
「ようやく目当ての妖怪を見つけたのか!」
俺の言葉を聞き、皆の空気が変わる。
少し進んだ先に、こちらを見据える妖怪が居る。
牛の頭に、体は筋骨隆々な真っ赤な人間の体をしている。
牛頭とは地獄に居るとされる亡者を責め苛む獄卒として有名である。
その左腕には、女性が担がれていた。
「牛頭が居るということは……やっぱりいるよね」
俺が後ろを振りぬくと、そこには馬の頭に人の体をした鬼、
こちらも同様に地獄に居るとされる亡者を責め苛む獄卒として有名である。
牛頭馬頭といえば、セットで語られることも多く、『今昔物語集』にも登場する有名な妖怪だろう。
単体では三級程度であるが、同時に戦うとその連携が厄介で二級妖怪並と言われていた。
「牛頭馬頭……なるほど。確かに一人で戦うと厄介かもしれないわね。けど、こっちは戦闘員だけで四人も居る。分かれて戦えば……」
未希が口を開くと、佐渡さんが手で制す。
「この二匹は私が祓います。皆様は周囲の妖怪達の掃除を。六年ぶりの戦闘なので、鈍っていないといいのですが……」
佐渡さんはネクタイを締めながら言った。
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