第86話 勝負を
「お知り合いですか?」
「はい。昔ですが……行きましょうか」
佐渡さんは表情を変えずに、小さく答えるとそのまま山へ向かった。
山は申し訳なさ程度の柵に囲まれているが、所々壊れており柵として機能しているとは言えなかった。
山からは霊力が漏れ出している。第三級立入禁止地区にもなっており、かなり妖怪の量が多い。
「妖怪の数がかなり多いですね」
佐渡さんが呟く。
「これを放置しながら捜索していると、いざと言うときに囲まれる可能性が高い。数日、妖怪の数を減らしながら捜索を行います。お三方には負担をおかけしますが」
「「分かりました」」
二人が返事をする。
「分かりました。だけど、君にも戦ってほしいな、道弥君。超新星と言われる、君の実力が知りたい」
だが、未希はこちらを見てそう言った。
「未希さん、彼は索敵のみでの契約です。私の友人が彼の実力は保証しています」
冷静に佐渡さんが未希を窘める。
「知ってます。ですが、私だけではありません。他の二人も、今陰陽師界中が彼の実力を知りたがっている。世間を騒がせた超新星の実力を」
未希はこちらを見て笑う。
「見せるのは構いませんが、ただ働きは御免ですよ」
俺は両手を上げて、笑う。
「知ってるわ。簡単な勝負をしましょう。この山の妖怪を二十分以内に何体倒せるか。カウントは頭部で行う。私に勝ったら私が自費で報酬を支払おう。五級一体四万。四級四十万、三級一体四百万だ。協会の討伐報酬に準じた正当な報酬よ。どう?」
「いいですよ」
俺はそう言いながらも、笑いが止まらなかった。
助かる。金が欲しかったんだ。
報酬は特別高い金額ではない。だが、数が無制限ならいくらでも稼ぐことができる。
俺はすぐさま鞄から紙を取り出し、契約書を作成する。
「こちらにサインを」
「し、しっかりしているね……まだ十五でしょあんた……」
ちょっと引き気味だが、未希はしっかりと契約書にサインした。
「言っておくけど、私に勝った場合だからね」
「大丈夫か、未希?」
同席している他の陰陽師が心配そうに言う。
「私が負けると思っているの? 陰陽師になって九年。今年なった若造にはまだ負けないわよ!」
と自信満々に言い放つ。
「はあ……。分かっているとは思いますが、不審な敵を見つけた場合はすぐに鳩で助けを呼んでください。私は安全のため、芦屋君につきます」
佐渡さんは我が儘を言う生徒を見るような顔で未希を見た後、ため息を吐いた。
「では……スタート!」
未希はスタートと共に、式神で熊を召喚し、熊に乗ってその場を去る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます