第74話 今後
翌日、俺は家の前に集まるスカウト達から逃げるように家から出ると、近くの森へ向かった。
「最近は家も騒々しいですからなあ。森は静かでいいです」
真はやはり自然が好きなのか嬉しそうだ。
「そもそも凡人共が道弥様を従わせようなど傲慢としか言えません。道弥様、今後はどうなさるおつもりですか?」
「分かっているだろう。晴明を殺す。今後はそのために動くぞ」
それを聞いて、莉世はにこりと笑う。
「承知しました」
「だが、まだ力が足りん。式神も、霊力もだ。奴は全盛期の俺よりも霊力があった。おそらく現在の俺の倍近くあるだろう。おそらく奴は十二神将も揃えている可能性が高い」
十二神将とは千年前に晴明が従えていた十二体の式神である。その強さはすさまじく、彼の強さを支えていたのは間違いなく奴等だろう。
「数が足りませんなあ。流石に、私と莉世だけで十二体を相手にするのはいささか難しいでしょう」
「数もそうだが、まずは俺の霊力だ。霊力がなくては、式神の数も増やせんからな」
「既に普通の一級陰陽師の何倍もありますが、晴明が相手となるといささか……。だが、主様。私と会った時よりも霊力が増えてませんか?」
真が首を傾げる。
「確かに」
「私や莉世と戦った後、霊力が増えている気がしますね」
「戦闘により霊力が上がったと。そのような者も居るとは聞くが」
確かに年齢が上がっても思ったより霊力の上がりが鈍いのだ。前世の霊力は、全盛期の四割いかない程度。
「試験中の戦闘では全く上がらなかったことを考えると、やはり敵のレベルでしょうか?」
莉世が首を傾げる。
「命がけの戦闘ならば霊力が増加する可能性も高いと。試す価値はある。とは言ってもそうなると少なくとも一級以上だろうな」
「本気で晴明とぶつかるのであればかつての仲間、そして新たな仲間も必要でしょう」
「零級以上の妖怪が、な」
そのレベルとなると、日本中探してもそうは居ないだろう。だが、一級妖怪程度では晴明相手では役に立たない。
「一般人では禁止になっている第一級立入禁止区域に住まう妖怪達を手当たり次第に探すしかありませんな」
ただ晴明を殺すだけでは芦屋家の汚名をそそぐことはできないだろう。俺が一級陰陽師になり、芦屋家の名声をもう一度復活させなければ。もう二度と、芦屋家を馬鹿にさせないために。
「昇格すればよいのです。道弥様なら一瞬ですわ!」
笑顔で莉世が言う。
「三級への昇格には、四級クラスの依頼を複数こなすこと。そして、三級妖怪の討伐依頼を単独でこなすこと。後者は三級以上の陰陽師が三人監視としてつくらしい。二級以降も同様だ」
ようするに単独討伐するだけの実力を証明しろ、ってことなんだろう。
「楽勝ですなあ」
真が牙を見せてどう猛に笑う。
すぐに一級まで駆け上がる。そのためには、依頼をサクサクとこなすしかない。俺は家に陰陽師免許が届くのを嬉々として待っていた。その後事務所開設の手続き。やることは山ほどあった。
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