第51話 交渉
最終試験二日目の朝。
朝の陽ざしが森に差し込む頃、受験生達も行動を開始した。
草木をかき分け進んでいたのは、陸。宝華院兄弟の弟である。
陸の肩に、一際立派な鴉が止まる。
その鴉は三つの足があった。
ちなみに
その強さは様々で、子供の頃は五級妖怪として扱われているが、過去には一級妖怪レベルの八咫烏も確認されている。
「リク、ミツケタ! シロイオンナ!」
八咫烏が話す。
「よしよし、いい子だ。案内してくれ」
陸はすっかり支配した二人の仲間を連れ、ある女性の元へ向かう。
しばらく歩き、ようやく陸は目的の女性の元へたどり着いた。
「よう、久しぶりだなあ」
そう声をかけられた女は顔を歪ませる。
「なんだ? 私の青勾玉を取りに来たか?」
そう答えたのは夜月。既に護符を手に持ち臨戦態勢に入っている。
全く陸を信頼していないことが分かる。
「おいおい、俺は女とやりあうような趣味はねえぜ?」
陸はそう言って、両手を上げる。
「お前がそんな殊勝な心掛けを持っているとは知らなかったな」
「いいのかい? そんなこと言って。隠してるんだろう、家のこと?」
陸の言葉を聞いて、夜月の顔から表情が消える。
「なぜ知っている!」
「そんな簡単にばらしちゃだめだよー夜月ちゃん。態度を見れば分かるさ。俺は隠し事を暴くのは得意でね」
と陸はにたりと笑う。
派手に染めた金髪は、陰陽師服とはどうにも合っていない。
「何が目的だ?」
夜月は陸を睨みつける。
「勿論一位の座だ。そのためにはあの男の百点が必要な訳よ。少し手を貸してくれないか? なに、お前に直接あの男を狙えとは言わねえさ」
「私に道弥を襲えのを手伝えというのか?」
「ルール上敵を襲うのは許されている。これはただの共闘だ。手伝ってくれれば、俺の十点はくれてやる」
それを聞いた夜月は、吐き捨てるように答える。
「お断りだ」
「ああ?」
周囲が凍り付いた。
「お前、ばらされてもいいのか?」
「ばらされても絶対に道弥の不利になることをするつもりはない」
はっきりと答える夜月を見て陸の後ろにいた二人の陰陽師が護符を構える。
「決裂ということで、やりますか?」
その言葉を聞きつつも、沈黙を守る陸。そして少しして口を開く。
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