第4話 特訓フェイズ!

 現実の俺は赤ん坊。

 まずは全盛期の力を取り戻すことから始めるべきだろう。

 現在の霊力は全盛期の一分いちぶ(一パーセント)程しかない。

 だが、体の中に昔の霊力は確かに感じる。




 時間とともに、必ず前世の霊力は戻ってくる。

 この体には今、前世の霊力と、今世の霊力二つが宿っていた。

 すなわち理論上は二人分の霊力が宿っている。ならば前世より高い霊力を持つことも可能なはずだ。

 今は赤ん坊、霊力を増やす特訓をすべきだろう。


 基本的に陰陽師は霊力を消費することで式神を使役し、護符を作成し、結界を張る。陰陽師の仕事は霊力なしには成り立たない。

 霊力が低くてももちろん戦えるが、霊力が高いに越したことはない。

 では霊力の増やし方とは? 

 それは簡単で、限界まで霊力を使い切る。それだけだ。


 平安時代の陰陽師は、子供にまず毎日限界まで霊力を使いきるように伝える。使い切り、霊力を回復する過程で、少しずつ限界値が増えていく。小さい頃の方が霊力は伸びやすいと言われており、名家はいかに小さい頃から霊力の使い切り方を教えるかに躍起になる。

 だが、流石の俺も零歳から霊力を使い切る子は見たことがない。


 もし、零歳から毎日行った場合、どれほどの霊力を果たして得ることができるのか想像もつかない。

 それに、転生前の霊力が合わさったら?

 前回の人生より、高い霊力を持てばきっと陰陽師の頂点になることも可能だろう。

 だが、今は護符もなければ、式神も居ないんだよなあ。


 俺はぼんやりと考える。

 分かりやすい霊力の消費方法は式神召喚と護符作成である。

 だが、赤ん坊の身ではそれは厳しい。

 俺は結局簡単な霊力消費方法として身体強化を行うことにした。


 霊力で体を包むことで身体能力を強化できる。

 体を俺の霊力で覆えば、赤ちゃんの体でも刀で斬られても死にはしない。

 だが、これは多くの霊力を消費するため現実の戦いで陰陽師が身体強化をすることは殆どない。

 だが、その消費が今回の修行方法にぴったりな訳である。




 俺は母の目を盗み身体強化を行う。今触れられたら突如鉄のように固くなった我が子に気付いた母は気絶してしまうだろう。

 一分いちぶとはいえ、中々消費するのには時間がかかりそうだ。

 俺は将来のために、霊力を消費する。芦屋家の再興のために。

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