本日の特価品 筋肉100g 〇〇円!
京高
ですよねー……
「……は?」
それを見た瞬間、おれは間抜けな声を出して固まってしまった。
実家の近所にある商店街。その一角にある精肉店はコロッケやメンチカツなどで小腹を満たせる、昔からの買い食いポイントだった。
問題なのはその店頭に置かれたポップ広告というのか?商品紹介の一文だった。
『本日の特価品 筋肉100g 〇〇円!!』
※注意、諸般の事情につき金額の方は伏せさせて頂きます。
「筋肉……、だと?」
これは一体全体どういうことなのだろうか?
筋肉ってなんだ?そのくらいは知っているさ。運動するためには欠かせない部分の一つだ。そういう意味では、動物が動物であるために必要なものだとすらいえるだろう。
また、独特の美しさを持っており、魅せるためのボディービルディングがあるほどだ。
……違う、そうじゃない。どうやら衝撃で頭が混乱しているみたいだ。
つまりだ、おれが言いたいのは「いくら精肉店だからといって筋肉を売って良いのだろうか?」ということだ。
大学進学を機に実家を出た身だったため、本日は久方ぶりの地元散策だった。
が、想像もしていなかった思わぬ方向にとんでもない変化をしてしまった?
そもそも筋肉をどうするというのか。
眺める?……いやいや、まさか。生物の授業でもあるまいし。
それじゃあ、やはり食べるのだろうか?
目の前にあるのは精肉店であり、取り扱っている商品はほとんど全てが食用だ。だとすれば筋肉もまた食用だという可能性が高い。それはもう非常に高い。受け入れられるのかどうかはともかくとして。
「ん?……おお!久しぶりじゃないか!」
ふと、店主の親父さんから声を掛けられる。近所に住んでいて買い食いの常連だったから顔を覚えられていたのだ。
この際だ、意を決して尋ねてみるか。
「おやっさん、これ……」
「うん?」
指さしたポップ広告を見た次の瞬間、
「ぶわっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
「どうしたんだい?」
親父さんは大声で笑い始めた。その声に釣られるように奥からおばちゃんも顔を出す。
「ああ、笑い過ぎて腹が痛え。母ちゃん、これ失敗した方を出してるぞ」
「え?……ああ!あはははははは。間違えちゃったわねえ」
困惑するおれと、発作のようにふき出している親父さんを残して、おばちゃんは店の奥へと戻ってしまう。しかしそれも束の間、手に一枚の紙を持って再び現れた。
「この前、職場体験にやって来た子どもたちに作ってもらったのよ。で、こっちが正解」
言いながら件のポップ広告と手にしていた紙を入れ替える。
そこにはこう書かれていた。
『本日の特価品
※注意、こちらも諸般の事情につき金額の方は伏せさせて頂きます。
……あー、つまり、なんだ。
ただの書き間違いかよ!?
本日の特価品 筋肉100g 〇〇円! 京高 @kyo-takashi
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