前髪

あなたへ


あなたがこちらにいた頃は、

私の前髪が伸びると、いつも、あなたが切ってくれましたね。


手先が器用なあなたは、いつもきれいに切ってくれた。


最後に、あなたに前髪を切ってもらったのは、

2年前の、梅雨の頃だったでしょうか。


新聞紙を引いて、

真剣に私の前髪を切るあなたの顔が時々、可笑しくて、

笑っちゃう私に、

「曲がるぞ!」って、あなたは怒るけれど、

やっぱりそれにも笑っちゃう私に、あなたも、一緒に吹き出した。


あなたは、私の前髪を切る度に、どんどん上達して、

美容師さんにも負けない腕前でしたね。


あなたが、そちら側へ逝き、

私は、自分で前髪を切るようになりました。


あなたの切り方を思い出し、

あなたに切ってもらっている事を想像してみたけれど、

やっぱりちょっと、曲がってしまいます。


いつか、上手に切れる時が来るでしょうか。


この前髪が伸びたらまた、挑戦してみたいと思います。

今度はもっと、鮮明にあなたの事を思い出しながら。



2016.07.21


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