髪を切りました
高見南純平
当日
髪を15cmも切った。
ずっとロングだったから、なんか新鮮。髪を乾かすのが楽すぎて、ちょっと感動しちゃった。
女の子がバッサリ切ると、失恋したんじゃないか、って思われる。
美容室のお兄さんが「なんかあった?」って言ってきた。
いつも前髪と量を減らすぐらいだから、驚いて当然だけど。
気分転換。
と、お兄さんには言った。嘘じゃない。
けど、本当の理由は、カッタくんに少しでも私に興味を持って貰うため。
彼がショートが好きなのかさえ知らない仲だけど、新しい私を見せたら少しは振り向いてくれるかも。
そんな淡い希望のために、ロングヘアーとバイバイした。
少しだけ髪を切った次の日は「誰かに気づかれるかな?」なんてよく思ってた。
けど今日は、クラスメイトならすぐに気がつくと思う。それぐらいイメチェン出来た気がする。
友達には、私から言っちゃうかも。「髪切ってめっちゃ楽」みたいな感じで。
もし「髪切った?」なんてカッタくんに喋りかけられたら、どうしよう。
どうしようって、そのために短くしたんだけど。
ちょっとシミュレーションしとこうかな。んー、でも特に何も言われなかったら、余計ショックに感じるかも。
私は明日の登校を楽しみにしながら、鞄に筆記用具とかを詰め込んでいた。
すると、「ブッブー」と勉強机においてあるスマホが鳴った。
誰だろう。アケミかな。
私は立ち上がり、スマホに目をやる。画面には、送られてきたメッセージが小さく書かれていた。
それを見て私は驚愕した。
ピザを美味しそうに食べているアイコン。
カッタくんだ。
「っえ、どうして!?」
変な声が出た。声が裏返っちゃった。
カッタくんとは、連先は交換してる。でもそれは、クラスメイトだから。皆、知ってる。
だからほとんど喋ったことがない。
一度、宿題のことについて質問されたことはあるけど。
「明日の数学の宿題さぁ、やったほうがいいかな?」
宿題の範囲じゃなくて、やるべきかどうか聞かれるとは思わなかったけど。
宿題はやるもんだ、と思ってる私には、絶対に生み出せない発想だ。
その時私は「やったほうがいいと思うよ。カズハラ先生厳しいし」とアドバイスしたのを覚えてる。
今日は何だろう。あれ以来、メッセージのやりとりはしていない。
カッタくんから来たメッセージを、私はおそるおそる確認する。
『髪切った??』
っえ。
な、なんで!?
私は思わず2度見をしてしまう。
見間違いじゃないかとよく確認する。でも、やっぱりそう書いてある。
なんで、カッタくんが知ってるの??
私はそんなわけないのに、部屋の隅を見渡してしまう。
監視カメラなんて仕込まれてるわけないのに。
メッセージを開いて、返信することにした。いつもならなんて返そうか悩むけど、今回はすぐに文字を打ち込めた。
理由がに気なりすぎるもん。
『そうだよ。
でも、どうして知ってるの?』
カッタくんからメッセージくるだけで謎なのに、まさか散髪したことをもうすでに知ってるなんて。
アケミにもまだ言ってないのに。
『店出るとこ見た。
あそこ、俺も使ってんだ』
衝撃の事実。
嘘でしょ。同じ美容室通ってたんだ。
確かにカッタくんと私は同じ町に住んでる。
でも、一度も美容室で遭遇したことなんてなかった。
たぶん、私が店を出たところを偶然見たんだ。
それで、わざわざメッセージを送ってくれたんだ。
あれ、ってことは……。
私は思い切ってカッタくんに聞いてみた。
『もしかして、前田くんも髪切った??』
前田カッタくん。私は勝手にカッタくんて呼んでるけど、そんな仲じゃないんだよね。残念ながら。
『そうなんよ。ワックスつけてるからカッコいいべ』
そのメッセージとともに、写真が送られてきた。うそ、画像が送られてきたの初めて。
その写真は、美容室でスッキリした顔と髪をしたカッタくんが写ってた。
とびっきりの笑顔をしていた。
カッコいい。
私はそのままの感想を、スマホに打ち込もうと思った。でも、そんな直接的な台詞は無理だ。メッセージは記録に残るし。
『さっぱりしてていいね』
定番の言葉で返信した。それと同時に写真を保存した。あっちから送ってきてくれたし、これぐらいいいよね。
カッタくんからはすぐに返事が返ってきた。
『だよなぁ。
片浜も随分切ったよな。
短いの、似合ってたで』
か、カッタくんが私のこと、褒めてくれた。
自分でもこの髪型は気に入ってる。
でも、結構思いきったから、正直不安だった。
でも、もう何があっても後悔しないと思う。
彼のお墨付きがついたんだから。
髪を切りました 高見南純平 @fangfangfanh0608
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