「鯨よりも深く」つるよしの様

「鯨よりも深く」

著:つるよしの様


https://kakuyomu.jp/works/16816452221487005352


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 美大を卒業して就職もしていない私が、もう取り壊されるアパートの一室をアトリエとして使っていた夏のお話です。


 個人的には好きなものがいくつも詰め込まれた作品! 「夏」「美術」「夜」「鯨」あたりがモチーフとして好きすぎる。しかもそれぞれがエモーショナルに描写されていて、切ないというか、夜の海を眺めたときのしっとりとした気持ちのような読後感を味わえました。

 また文体も美しいので情景がありありと浮かぶし、世界観の構築にも一役買っているなという印象をもちました。


 またアイスキャンデー売りのおじさんが切ないのなんのって。アイスキャンデー売りって田舎でもそうそう見なくなったんじゃないかなあと思ったので、もしかして主人公の夢? と考えたんですけれど、最後にはお兄さんが引き継いでいたので実際におじさんはいたんだなあ。おじさん……人生波瀾万丈すぎる……夢が叶って良かったね……。泣


 電気も通っていないアパートの一室は仄暗くて、まさに深い海のなかに月の光が差し込んでいる情景が浮かんできました。そこを壁に描かれた鯨が泳いでいる様。


 私たちは、いつのまにか、何頭もの鯨の泳ぐ海の底に佇んでいた。

          (本文引用)


 この一文が好きです。それぞれのモチーフがうまく繋がって綺麗だなあと思いました。


 企画にご応募いただきありがとうございました!

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