第 二 回 ③ <インジャ生誕>
ハクヒ
ムウチ夜に夢中に天王に拝謁す
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それから数日後の夜半、ムウチは人の気配を感じて目を覚ました。見ると房室の外に、右手に弓を携え、左手に燭台を掲げ持った礼装の女が立っている。驚いて声も出せずにいると女が言うには、
「私は
「……
「
「
「すぐそこにおいでです、さあどうぞ」
とて、ムウチを先に行かせる。言われるままに歩いていくと、女が突然その背中をどんと押した。
「あっ、何をするのです」
「ムウチ殿、落ち着いて周りをよくご覧なさい」
はっとして見渡せば、いつの間にか巨大なゲルの中にいる。目を
「もうすぐ
その言葉が終わらぬうちに前方の
「
言うのを聞いて、さてはあのお方が
「ムウチ殿、顔をお上げなさい」
「
恐る恐る顔を上げると、
「貴女のお腹の子についてひと言申しておきたいことがあったので、わざわざ来ていただきました」
「な、何でございましょう」
「貴女の子は、
「えっ? どういうことでございましょう!」
ムウチは思わず叫んでいた。
「今、
あまりに意外な言葉を聞いてムウチは頭がぼうっとしてしまい、さっぱりわけがわからなくなってしまった。
「例のものをムウチ殿に」
侍女は黙って頭を下げると奥に消えた。やがて盆に杯を載せて戻ってくると、それをムウチの前にそっと置く。
「ムウチ殿、さあお飲みなさい」
それはとても強い
はっと気が付くとそこはもとの一室。すでに夜は明けていた。
何と不思議な夢、と呆然としていたところ、
その瞬間にはこれもまた不思議なことに、辺りが
ともかく無事に出産を終えたが、果たして御子が男女いずれであったかといえば、
「ご夫人、男の子でございます!」
ムウチは満足げに頷いたが、ハクヒの喜びようもひととおりではなく、まるでもうフドウ再興が成ったかのよう。
その夜は寝台を囲んで宴を張り、出産の無事を祝った。ムウチが夢に
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