エンディング

 リリムは港に座り込んでいた。誰かが通りがかるのを待っていたのである。死んでいった仲間を弔おうにも、満身創痍な上、何も持っていない為に出来ないのである。水面を見つめて何もできないでいると、何かが流れてきた。よく見えず、ゆっくりと手を伸ばし、身を乗り出した。すると突然、水しぶきとともにリリムの手首が掴まれた。驚き声を上げる前に、水の中に落ちてしまった。必死に振りほどき海面に飛び出した。逃げようとするリリムに、掴んだ何かが声をかけた。


「リリム!助けて!!!」

「えっ!?マミ!?!?!?」


リリムはさっきまでいた港の地面に戻ると、マミを引き上げた。マミの体は黒く焦げつつも、きちんと包まれていた。二人は喜び抱き合い、歓声を上げながら飛び跳ねあった。一通り盛り上がった後、落ち着いて助かった理由を話し合った。

「全身が燃えた時は、さすがに焦ったよね。」

「あんなに燃えていたのに、どうして大丈夫だったの?」

「これのお陰よ。」

マミは自分に巻かれている布を、指さした。黒くすすけているものの何やら普通の布とは違うように見えた。

「普段の皆に見えている布は普通の布で、汚れても平気な、破れても大丈夫な布なのよ。でも念のために身体に近い布は凝っていて、耐火性の布を使っていたの。だから何とか海にたどり着けて、助かったわけ。」

「本当に良かった。私一人しか居ないと思っていて、本当に良かった。」

「でも、気付いてくれなかったら海をあのまま漂っていたよ~」

「新しい布を探さないとね。」

「人間に襲われたけど、人間の技術で助かるのは皮肉なような。」

「生きているだけで、良いじゃない。死んでいるけど。」

「人間にやられるとか、ご先祖様に怒られるね。」

軽口を叩きあっていると、リリムは見覚えのある船を見つけた。それは魚で一杯の木船であった。二人が大きく手を振ると、乗っていた魚人も気が付いて振り返した。

「もう、終わったのね……」

「えぇ…………」

「これからどうなるのかしら……」

「…………………………………………」

ゆっくりと近づく船から視線を外し、リリムは振り返った。鬼ヶ島の十字屋敷を見ながら、今後の事を思い始めた。過去の事、仲間の事、敵の事、未来の事。それぞれを悩みながらも、今は安堵の気持ちに漬かることに専念することにした。

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