足跡

 現在

それぞれの状況や考えを出し合い、認識のすり合わせを行った。まとめが出来る頃には朝焼けが見え出していた。リリムが総括を述べることにした。

「20年前、この島で【人間狩り】もどきが行われた。人間と魔族が共存する中で禁止された行為を軽く思っていたから。見つけた知らない人間一人を驚かすだけだったけど、この人間は追い詰められすぎて海に落ちて死んでしまった。自分たちの罪を隠すために、誰にも言わず仲間内での秘密にすることにした。そして今から数日前、それぞれの元に手紙が届いた。誰にも言わずに島に来いという内容だった。秘密の為に来たら、ウルが殺されてしまった。というところかしら?」

全員の顔を見渡して、異論が無いようなのでリリムは私見を述べた。

「あの時、すぐに助けを呼べば……」

「今さら言ってもしょうがないだろ。」

「でも!」

「あと、俺はもう朝だから寝る。」

キバは立ち上がり、二階の北側の部屋へと消えていった。

残った四人は、今後の作戦を考える為に話し合いを続けた。

「逃げるためにも、外部と連絡を取らないと……」

「私は嫌よ。屋敷から出たくない。」

「置いていくぞ、と言いたいが腹が減ったから俺も残りたい。」

「それじゃあ、私とキュクロで港まで行って通りがかりの船を探すから、ドラゴとマミは屋敷の警戒に当たって。これでいい?」

うなずく3人を見たところで、またリリムが切り出した。

「あのさ………………」

「なんだ?」

「本当に生き延びた人間がウルを殺したと思う?」

「可能性は一番高いと思うが、どうして?」

「だって人間が死んでいるのは間違えないし、ウルは死んでいるところしか見てないのよ。」

「たしかにそうだな。だが、全員が屋敷にいたぞ。」

「銃音なんて、いくらでも隠せるでしょ。」

「リリムはキバが怪しいと思うのか?」

「種族対立もあるし……可能性は有ると思う。だけど、疑いたくはない……」

ドラゴはリリムを見つめるだけで、何も言わなかった。


「異常なし!」

「罠なのは、無さそうだ。」

屋敷の中を4人で検査し安全を確認したうえで、二手に分かれる作戦を決行した。マミは自室に籠り、ドラゴは料理をする。リリムとキュクロは、港へ向かい歩きだした。港への道は一本道であったが罠を警戒して、かつて使われていた今は獣道のような道を進むことにした。二人は警戒しながら歩んでいたが、話をして不安を紛らわせることにした。

「キュクロは、どう思っているの?」

「俺は、人間だと思っている。殺し方も人間の手口だし、全員が同じ場所にいたからな。」

「そうよね。当たり前といえば、当たり前だし。」

「死んだという話に矛盾が出るから、リリムの考えもわかるぞ。」

「第三の可能性とか無いかしら?」

「他の誰かってことか。それだと20年目のことを知っているのが矛盾しないか?」

「手紙の差出人とウル殺しが、独立しているとか?」

「手紙の文字は、6人の誰のものでもなかったし。」

「………………」

「………………………………」

「もう分からないから、警察に頼りましょう!…………20年前のことも話しましょう……」

「…………………………」

キュクロは立ち止まった。リリムは、質問した。

「20年前の事を、話されるのは困るの?」

「いや。」

「じゃあ、どうして止まったの?」

「たぶん、話す必要が無いから。」

「なぜ?」

「アレを見ろ。」

キュクロが指さす先を見ると、足跡があった。近づいてみると、誰のものでもない、人間の足跡であった。

「コレって?」

「犯人のかも……」

二人は足跡をたどる事にしたが、すぐに終着地点へと着いた。足跡は、大きな木の根元で途切れていた。

「………………………………」

「足跡、どこにいったのかしら?」


………………………………………………


「あった、ココだ。」

ドラコは自身の腹を満たす為に、調理場を探していた。20年ぶりなので、存在は覚えていたが場所をすっかり忘れていた。屋敷の北側の1階、そこにあった。意外と綺麗にされており、電気も通っていた。

「何か無いのか?」

色々と漁ってみるが、野菜しか無かった。とりあえず炒めながら周囲を見渡す時、[冷凍室]の文字が見えた。中はキチンと冷やされているのか、扉はとても冷たくなっていた。

「寒いな……何か肉が有ればいいが…………」

ドラコは扉を開けたまま、中に入って食材を探した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る