Only Won Love

熊のぬい

第1話

 2120年、フルダイヴ型のVRゲーム(通称FVR)が発売された。そこではあらゆる感覚が再現される。それから、20年後、世界ではFVR“Only Won Love”略してオウルが流行りだした。そのゲームはオープンワールドで、最新のAIが搭載されてプレイヤーが行動によって大元のストーリーが変わっていくというものだ。NPCと恋愛は勿論、魔王になることも出来る。自由なそのゲーム性に世界中が夢中になった。


 藤宮フジノミヤイチは、昨日ようやく成人になり、オウルを起動させた。プレイヤー名はフジイチ。

 全身をスキャンして、それを元にキャラクターを作成していく。玄人は、一からキャラクターを作成するが、フジイチはそこまで苦労したくないが為にスキャンを選択した。


 髪を腰まで長くして三つ編みに、色は白色。瞳はちょっと大きくして赤く染める。顔は小さく、足は長く、薄く筋肉をつけて…。


 フジイチは自分の思い通りにキャラメイクをしていく。


「よっしゃ!これで完璧!!」


 キャラクターを完成させると、次はキャラクターの職業を選ぶ。

 最初の職業は、今後のステータスを左右するものであり、慎重に決めなくてはならない。例えば、魔法使いで有れば、MPが上がりやすくなり、戦士であればHPが上がりやすくなる。


「なんだこれ?ダンジョンマスター?」


 職業一覧の中に、一際目立つ物が一つ。その文字の隣にはポップな字で激レアと書かれていた。


 オウルには、キャラクター作成時にランダムで激レア職業というものが存在する。

 それはNPCが死んでしまったり、プレイヤーがサーバーから追い出された時に就いている職業がキャラメイク時のみ、ランダムで一覧に表示される。

 激レア職業を求めて、リセマラをするほどコアなプレイヤーも存在している。しかし、激レア職業はライトな層には知られておらず、フジイチも知らない側だった。


「これでいっか」


 フジイチは何も考えず、その職業を選択した。彼はレアと名のつく物に弱い。

 ダンジョンマスターを選択すると、『特殊な職業です。擬態、隠蔽しますか?』と表示され、フジイチは迷わず、はいを選び、擬態後の職業を選ぶことになる。擬態後の職業は魔法使いを選択した。


 職業の次は、スキルを選択する。

 スキルは職業スキル、一般スキルと分かれており、スキルポイントで取得できる。

 最初に15ポイントが与えられている。


「これ良いじゃん」


 そう呟いてフジイチは、運を貯められることの出来る《貯蓄(運)》に全てのスキルポイントを捧げた。

 このスキルは、オートで発動しており、アイテム取得率をランダムで下げ、下げた運を0.0001パーセントとして貯蓄、任意の発動でそのパーセンテージをプラスすることが出来る。

 そして説明文には書かれていないがこのスキルを取得すると、“悪運”という状態になり本来必ず取得できるはずのアイテムを取り逃す可能性がある。しかも、取得にかかるポイントは15。コストがかかる為、取得する人は少ない。


 フジイチはそんな事も知らず、ただ説明文を読んで決め、これから始まるゲーム生活に心躍らせた。

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