第4話

 部屋に入ってすぐに、先輩は暖房をつけた。

 そして、抱きしめられた。

「うわっ」

 だから、なんでそうなるの?

 今日はもう、わけのわからないことばかりが起こる。

 思考が追いついていかないため、もう流れに身を任せるしか出来なかった。


「あったかい」

 小さな声だけど耳元なのでハッキリ聞こえた先輩の声。

 そういえば先輩のダウンコートはモコモコでーー寒がりなのかな。

 私は湯たんぽ代わりか、そう思えば納得がいく。

 それを裏付けるかのように、部屋が暖まったら先輩は私から離れた。

 離れる瞬間、ほんの少し寂しさを感じたことは気のせいだと思いたい。

 先輩はダウンを脱いでハンガーにかけた。

「脱いで」

「あ、はい」

 私は着ていたコートを脱いだ。

「脱いで」

 ん? 脱ぎましたけど、えっと……まさかとは思うけど、更に脱げと?

「こ、ここで?」

「それもそうね、来て」

 連れて行かれたのは寝室で。

 マジか、いやでも、さすがにそれは……

「ひえっ」

 ボーッとしてたら先輩の手がスルスルと。私はいつの間にか下着姿で、ベッドに押し倒されていた。

「先輩?」

 私の上でジッとしている先輩。

「やっぱり暖かい」

 それはそうだと思う。なんてったって私はあの最初の不意打ちのキスから、身体が火照りっぱなしなんだもん。

 身体を起こして、私の目を覗き込む先輩。切れ長の目をさらに細めてゆっくり近づく。あと少しで唇が触れる寸前で止まる。

 今度は、不意打ちではない。

 覚悟は出来ているーー私は目を閉じた。

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