黒田郡探偵事務所 第六章 天岩戸にて

KKモントレイユ

第1話 裕美と葉山

裕美ひろみ圭太けいたが東京に向かった経緯と九州に来ることになった経緯


 東京で裕美と圭太は葉山に会った。葉山はやまの話では、六峰鬼神会りくほうきかみのかいの東京支部に中部支部の者たちが出入りし交流が活発になっているようなので少し様子を探る手伝いをしてほしいというものだった。それに併せて中部支部のメンバーの顔と名前の情報をつかみたい……だから東京へということであった。

 しかし「九州で大変なことが起こっているようだから九州へ行く」と新幹線で東京に向かっている途中に連絡があった。東京ではほんの少しの時間、葉山と会ったが、葉山の方はすぐに九州に行くと言って先に旅立った。

 この短い時間に裕美の方は東京支部と中部支部の情報を少しつかんだようだった。そして今日に至る。


****


 裕美と圭太が東京を発って九州についた宮崎県某市に着いたのは昼過ぎだった。

「ごめんね。急に九州まで来てもらって」

約束していた場所で葉山と優一が裕美たちを待っていた。

「本当よ。そちらは」

「優一君」

「なに? 東京から九州まで呼び出して彼氏の紹介?」

裕美は優一の周りを一周回って顔を見て……

「素敵な人じゃない」

という『なんだかネコみたいな人だな』と思った。しかし、改めて近くで顔を見られると『とんでもなく綺麗な人だ』と思った。まるでモデルのような容姿にドキッとした。

 葉山に睨まれ首を振る優一。微笑む葉山。そんな二人の様子を見て裕美が微笑む。

「仲いいのね。私は久宝裕美くぼうひろみ。葉山とは大学時代からの友達なの。よろしくね」

そう言って裕美が微笑む。


 市内の喫茶店で少し話をしたあと、ある人物に会うのだと言って店を出た。その人物のいる場所には歩いて行けそうだという。


 葉山が話を切り出した。

「ところで東京でも少し話したけど、ここで調べたいことがあって」

「『四つの秘宝』の話?」

「そう、某市にいる矢田さんという方から『向こうの世界の秘宝を持ち出そうとしているものがいるようだ』と霊寿れいじゅさんに連絡があったみたいで、それを確認してほしいと言われたの」

「向こうの世界? こっちのものを集めようとしてるんじゃなくて、向こうのものを持ってくるの?」

裕美が怪訝そうな顔で葉山に聞く。

「霊寿さんはそう言ったわ」

葉山が呟くように言う。


「『四つの秘宝』、『剣』、『鏡』、『勾玉まがたま』あと一つがわからないけど、こっちは三つそろってるんでしょう。確か『剣』は、葉山はやま、あなたが持っているんじゃなかった? 『鏡』は私が持っているわ。そして『勾玉まがたま』は恵庭えにわが持っているのよね」

葉山は少し考えるような仕草をして

「『剣』は、この人、優一君」

「え? なに? あなた『秘宝』を恋人にプレゼントしたの?」

「いやいや、もともと私が正当な所有者ではなかったのよ」

「いや、あなたでしょ。どう考えても」

首を振る葉山。

「私があの『剣』を手にしても『剣』は何も反応しなかったの」

「……この人は?」

「龍が宿るところを見たわ。私も霊寿れいじゅさんも」

「そんなことがあるの?」

「あったのよ……でも、もちろん何かのときは私も手伝うから」

裕美は少し心配そうな顔で優一を見たあと

「大丈夫?」

と聞く、自信なさそうに頷く優一に、

「まあ、もちろん、みんな協力するから……恵庭もすごいから……」

「ああ、優一君は恵庭えにわのことも知ってる」

「え? そうなの。会ったの」

頷く優一。

「そう……見た? 彼女の力」

「はい」

「すごいでしょ」

「驚きました」

「そうよね。彼女の場合、そこにいる邪悪なものを『はらう』だけじゃなくて、自分自身の意識を別の場所へ移動させたり、幻影的なものを見せたりする、あと人の意識を呼び寄せたり、何か少し変わった『力』があるのよね」

裕美の隣にいる圭太けいたが、

「僕も驚いたよ。腰抜かした」

という。なんだか昔話の登場人物のような人だと思ったが、優一も岩手で初めて恵庭えにわに会ったとき腰を抜かしそうになったので、それはよくわかった。『恵庭えにわさんは、あれをいろんな人にやっているのか』とも思った。

「あ、ごめんなさい。彼を紹介してなかったわね。私の婚約者、三条圭太さんじょうけいたさん」


 そんな話をして歩いているうちに目的地に着いた。そこは町の中にある神社のような場所だった。


****

*これまでのすべての章*

黒田郡探偵事務所 第一章

https://kakuyomu.jp/works/16817330652061338785

黒田郡探偵事務所 第二章

https://kakuyomu.jp/works/16817330652640169333

黒田郡探偵事務所 第三章

https://kakuyomu.jp/works/16817330652831503800

黒田郡探偵事務所 第四章

https://kakuyomu.jp/works/16817330653025504131

黒田郡探偵事務所 第五章

https://kakuyomu.jp/works/16817330653363613165

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