第15話:まさかの妊娠ってか?

好人は母親が留守なのをいいことにルシルを自分の部屋に連れ込んだ。


好人の部屋に入るなりルシルはベッドを見てダイブした。


「ああ、気持ちいい・・・ヨシトの匂いがする・・・」


「僕の匂いって・・・どんな匂いだよ」


「好人の匂いを嗅ぐとゾクゾクする・・・」


「来て・・・ヨシト・・・」

「しょう・・・エッチ」


好人はもうルシルから離れられなくなっていた。


(相手は人間じゃなく悪魔なんだぞ)・・・そんなことを思いながらでも

ルシルとのセックスはやめられなかった。


(おふくろのいない間に・・・こんなこと・・・めちゃ興奮するんだけど)


それは自分の意思では止められなかった。

ふたりは何度も体位を変えて、ルシルは何度もイッて深い快感の海に

沈んでいった。

好人も最初の頃と違ってルシルをしっかり満足させられるようになっていた。


セックスが終わると好人もルシルもすっかり寝込んでしまっていた。

ルシルの呼ぶ声で好人は目が覚めた。


「ヨシト・・・起きて・・・なんかね、下の方で」

「よしと〜って、誰か女の声がするけど・・・」


「あ〜寝込んでた・・・たぶん、おふくろがパートから帰ってきたんだよ」


すぐに好人は二階から降りて行った。


「おかえり・・・」


「あ、好人・・大丈夫なの?」


「俺は大丈夫だよ、すごい経験したけどね」


すると二階からルシルも降りてきた。


ルシルを見た母親は、そこで固まった。


「ああ・・・紹介するよ、彼女はルシルって言うんだ」


と紹介されたものの、顔色がすこぶる悪くて、頭にツノなんか生えていて、

裸同然のルシルを見て、母親は「そうですか、いらっしゃい」って言えるほど

笑顔にはなれなかった。


そこで好人は母親に今までの経緯を話した。


その話を聞いた母親は、とても信じられない、理解しがたい様子だった。

想像できない出来事に戸惑っているんだろう・・・まあそれが普通の反応。


「これは本当の話だから・・・ルシルは悪魔なんだ・・・」

「ルシル、俺の母親・・・さとなかちはる(里中 千春)」


「ヨシトのお母さん、ルシルです、よろしくお願いします」


「あ、はい、よろしく・・・ルシルさん」

「でも、まだ信じられないわね・・・」


「そうだよね、でもこれが真実だから、しょうがないんだよ」

「信じてもらわないと僕が大ボラ吹きになっちゃうからね」


「そうね、受け入れるべきね」


「私、好人と契約結びましたから・・・もう離れられないんです」

「だからこっちの世界に来ちゃったんです」

「悪夢の世界に帰れるまで、ここいなきゃいけなくなって・・・」


「そうなの?好人・・・契約って?」


「好人は私とセックスしましたから、それで契約が成立したんです」


「セ・セックスですって?」

「あなたたち・・・好人、それ本当?」


「ほんと・・・向こうに、悪夢の街にいる時にね・・・そうなったんだ」


「まあ、人様のお嬢さんになんてこと・・・」

「そのことルシルさんの、ご両親はご存知なの?」


「ルシルは親兄弟いないんだ・・・ずっとひとりだよ」


「あ〜そうなの・・・まあ・・・それは・・・」


「びっくりしただろうけど、これも受け入れてね」

「なにも犯罪犯してる訳じゃないんだから・・・」


千春さんは一応は納得したが悪魔とセックスして、それが契約することに

なるなんて、どうにも理解できなかった。

でも、好人がそんなバカな嘘をついてるとは思えなかった。


しかもルシルって言う、証拠もいることだし・・・。


(あの子が悪魔ってね・・・好人は悪魔と契約を結んだってわけ?」

(離れられないって・・・まあ結婚できないとしても私も好人も、一生、あの子

(悪魔)と暮らすことになるのかしら・・・ )


千春さんはこの状況に慣れるまで、しばらくかかりそうと思った。


それから、なにごともなく三人の生活が始まった。

以外とルシルは規則正しい生活を送っていた。

日中は好人は就職活動に専念していたし、母親はパートに出ていたので、

昼間ルシルは暇を持て余していた。


外に出ても地理も分からない・・・だからあまり、ひとりで外をうろうろも

出来ないでいた。


セックスができたのは、好人が就職活動から帰ってきて母親がパートから帰って

くるまでの時間でラブラブしていた。


ところが・・・ところがだ・・・


好人は、避妊もせずにルシルとセックスに明け暮れていたので当然のように

ルシルの中に射精してたので・・・ルシルの体に変化が起きたわけで・・・。

それは、なんと・・・ルシルが妊娠したのだ。


ある日、ルシルから告げられた。


「私、妊娠したかも・・・」


「まじで?・・・」


まさかの妊娠・・・およよな出来事である。

前代未聞、空前絶後・・・支離滅裂・・・人間と悪魔の子供なんて、

ありえない話だ。


人類の長い歴史の中で悪魔が人間の子供を宿したなんて話、聞いたことがない。


これには、さすがに好人も驚いたというか、気持ちが動揺して焦った。

最初ルシルから生理が来ないって聞いた時は、ただ遅れてるだけだろうって

思っていた。


でも念のためと思って薬局で買って来た妊娠検査薬で、調べたら妊娠してる

ことが分かった。


こうなったらしかたない。

できちゃったものはしょうがない。


好人は千春さんにも相談したが、最初、千春さんはルシルが妊娠したって

聞かされてひっくり返るほど驚いた。

しばらくは動揺していたが、母は強し、すぐに冷静に戻って


「流産でもしたら大変・・・ちゃんと養生しないと」

「産婦人科も予約しなきゃね」


「あのね・・・ルシルは人間じゃないんだよ、健康保険だってないんだからね」

「産婦人科なんて行ったら、診察料どれくらい取られるか分かったもんじゃないよ」


「そうだったわね・・・戸籍ないのよね、ルシルちゃんは・・・」

「しかたがない・・・じゃあ私が面倒みるわ・・・」

「赤ちゃんは、なにがあっても、ちゃんと産むべきだからね」


母親の断固とした意見だった。


「人間と悪魔のハーフでも、ひとつの命」

「世間には子供が欲しくてもできない人もいるんだから、あななたちは恵まれて

るんですよ」


って千春さんに言われて、ふたりは納得して産むことを決心した。


ルシルもまさか人間の世界に来て、こんなことになるなんて思いもしてなかった。

でも、内心では好人の子供を授かったことを喜んだ。


悪魔との契約が成立した時から、起こりうる結果だったのだ。


ってことは人間の世界では、こうなると当然できちゃった婚ってことに

なるんだけど・・・。

嫁さんが悪魔なんて誰も信じないし、婚姻届なんかはもちろん受理されない。


一応千春さんとしては、ちゃんと式くらい挙げさせてやりたいと思った。

でも結婚式を挙げるなんてこと、ルシルは面倒くさいって当然、嫌がった。


「私は嫌だからね・・・そんなウザなこと・・・そんなのダサいこと・・・」

「それに、なんで悪魔が神様の前で愛を誓い合うんだよ・・・おかしいだろ?・・・神様だってシラけるに決まってるよ」


まあ、それは理屈だ。


結婚式なんてありえない話だろう、悪魔からしてみれば・・・。


ルシルから言わせて貰えば、好人とセックスした時点で結婚したも同然なんだから、

それでちゃんと成立してることを、なんで人間界でいまさら形にしなきゃいけないんだって思った。


なにより人間界のしきたりに、形に振り回されるのはルシルは嫌だった。


好人は別に結婚式なんか挙げなくてもいいって思っていたからルシルが嫌ならそれでいいと思っていた。

まあ、そのことについては好人とルシルの間で、もめるようなことはなかった。


それならと千春さんは、家族だけでささやかなお祝いをしようとふたりに提案した。


マンションの前の公園に、テーブルと椅子を持ち込んで三人だけで、結婚のお祝いをしようと言うことになった。

ルシルもせっかくの千春さんの申し出をムゲにするようなことはなかった。


「ふたりとも、いつまでも幸せにね」

「ルシル・・・可愛い赤ちゃんを産んでね」


千春さんは、そう言って祝ってくれた。


それにしても悪魔が普通に人間の子供を宿すなんてね。


つづく。

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