第3話:悪魔のキスは媚薬のキス。

ルシルは好人のことを勝手に恋人だと決めつけてしまった。


「私、もう何年もカレシいなくてさ・・・」


「そうなんだ・・・いたけど食っちゃったとか・・・」


と言った後で、好人は、しまったと思った。


「失礼だぞ・・・そんな真似するかバカ・・・私を化け物か何かだと思ってる?」


「あ〜いやごめん・・・冗談だって・・・ついさ・・」


「腹ん中で、そう思ってるからクチに出るんだよ」


「思ってないって・・・ルシルは可愛いとは思ってるけど・・・まじで」


「そうか?・・・ならいいんだけど・・・人を化け物みたいに言うと本当に食うぞ」


「え〜やっぱり食うんだ・・・」


「食わねえよ」


「でも、ルシルは、そんなに可愛くて魅力的なのに、彼氏がいないなんて

もったいないと思うけどな・・・」


「いるじゃん、目の前に・・・好人が私の彼氏だろ?」

「嫌なら、形だけでいいからさ・・・人間の彼氏ってダチの間で自慢

できるんだよ・・・珍しいからね」

「優越感に浸れるって言うかさ・・・」


「なんか俺、珍しいペットみたいだな・・・」

「それにさ、形だけでもいいって・・・それじゃ意味ないじゃん」


「じゃ〜嫌じゃない・・・よな?」


「別に嫌じゃないけど・・・君みたいなエロいキャラ好きだし・・・」


「なんだって?」


「何も言ってないよ」


「じゃ〜決まり・・・人間界に帰る方法見つけてあげるからね」

「その代わり、しばらくはコシュマールヴィルにいること・・・」


「それって矛盾してないですか?」

「俺が人間界に帰る方法が見つかっても、すぐには帰れないってことだろ?」


「だって、恋人同士になったばかりなのに、すぐにいなくなっちゃったら

意味ないでしょ」


「そうだけど・・・」


「心配いらないから・・・ね、住めば都っていうじゃん・・・ここにだって

すぐに慣れるから」


「俺がここに住むことを前提に話してる?」

「母親が心配してると思うんだけど・・・」


「親なんて心配させときゃいいんだよ」


「そんな無茶な・・・」


「今晩ここのベッド使っていいから・・・」

「まずは、彼氏として明日、私と一緒に学校に行くこと・・・いい?」


「がっこう?・・・学校って言った?」

「ここに学校なんかあるんだ?・・・悪魔も学校に通ったりするんだ?・・・」


「あるよ、学校だって、映画館だって、アミューズメントパークだって、

水族館だって・・・」

「スーパーもあるしコンビニもあるよ」

「どこの世界だって、働いて食ってかなきゃいけないし、そのために

必要なものだってあるんだよ」


「うそ〜そこは人間の世界と変わんないんだ・・・」


「じゃ〜君って学生ってことは僕よりいくつ歳下なんだ?」

「一見、俺より歳上に見えるけど・・・ 女子高生ってことになるのかな?」


「そうだね、人間の世界で言ったら女子高生だね」

「歳はたぶん17才くらいかな・・・人間なら・・・」

「いつ生まれたかなんて覚えてないし・・・興味もないしね・・・」


「いくつでもいいだろ・・・17才ってことにしといたら文句ないだろ?」

「年下の方がいいんだろ?・・・年上より」


「まあ・・・年下のほうがいいかも・・・」


「ああ、そうだ、もうすぐお昼だから・・・出前が届くからね、一緒に食べよう」


「え?まだ朝でしょ」


「あんたさ、好人は目覚めるまで3時間くらいこのベッドで寝てたんだよ」


「あ〜そうか・・・もう昼なんだ?・・・」


「腹減ってるでしょ・・・一緒に晩飯食べようよ」

「恋人同士だもんね」


「僕の彼女は悪魔ですって言っても誰も信じないだろうな」

「頭おかしいやつって思われるから言わないほうがいいだろうね・・・」


「まあ、ここでなら言っても大丈夫だよ、私は好人の彼女だからね」


「じゃ〜ヨシト・・・手始めにチューでもするか?」


そう言ってルシルはクチをとんがらせて好人に迫ってきた。


「ちょちょちょ・・・チューって、なに?」


「恋人同士でチューなんてあたりまえだろ?、なにためらってるの?」

「チューくらいするだろ、普通に・・・」


「はいチュー・・・してくれないと帰る方法探してあげないよ」


「それは困るな〜・・・」


まあ、チューくらいなら別にしてもいいと好人は思った。

って言うか、好人は相手が女なら悪魔でもいいからキスしてみたかった。

女性とはずいぶん長い間キスしてなかったことだし・・・。


好人は、それならとルシルとキスをした。

でもなんて言うの・・・軽くチュってするのかと思ったら、めちゃデイープな

キスだった。


ルシルとデープキスをした好人は、頭がぼーっとなって体が急に熱くなった。

悪魔のキスは媚薬のキスと言って、正常な男でも我を忘れて性欲の虜になって

しまうらしい。


好人も我を失って、ルシルの魅力に負けてしまうところだった。

とりあえず、今は待てと・・・いくらなんでも会ってすぐエッチさせて

くれなんてマズいだろうと余計な理性が好人の欲望をなんとか止めた。


(性格的に見てルシルは気の強そうな悪魔だし・・・ここは強引に攻めて、

往復ビンタでも食らわされた、めちゃ情けないし)


「すごいキスだね・・・って言うか、今のキスだけで理性を失いそうに

なったんだけど・・・君って怖い子だね」


「私のせいじゃないよ・・・生まれつき・・・悪魔はそういう生き物なの」

「これからもっと、楽しいエロい世界へ連れて行ってあげるからね・・・」

「まあ、最初はこんなもんかな・・・」


「とりあえず今は、キスだけで許しといてあげる・・・」


「とりあえずって・・・エロい世界って?・・・許すってなに?」

「俺はなに?・・・君の奴隷?」


つづく。

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