七人ミサキの成仏する順番が決まらないので、くじ引きを作ることになりました
鮎河蛍石
アンラッキー7
七にまつわる不幸と言えば、真っ先に思い浮かぶのが『七人ミサキ』だ。
七人ミサキは、四国地方や中国地方に伝わる集団の幽霊である。
七人組で現れ、一人を取り殺すと七人ミサキの内の一人が成仏し、取り殺された者が新メンバーになる。
この順番成仏システムは無限に連鎖する陰湿なものだ。
なのでこの七人の間に相当剣呑な雰囲気があるに違いない。
成仏の順番めぐりモメるに決まっている。
「俺が最初だ」
「いや俺が」
「祟り殺したのは我ぞ」
「この中で年長者は俺だ」
「年長者なら年少者に番を譲ってはどうか」
などと延々、言い合いになる。
「では公平をきするため、くじ引きで決めようではないか」
天啓であった。
不正があってはならないのでクジは七人がお互いを見張合って作るのだ。
「よっしゃー! 一抜けた!」
かくして当たりクジを引いた者が成仏する。
とはいえ成仏してからが大変だ。
冥途の裁判、沙汰は地獄に決まっている。
取り殺すのはマジで良くない。
話を戻そう。
「どうも新人の七人ミサキをやらせていただくものです。宜しくおねがいします」
「そう肩肘張るなよ」
「気楽にやりましょう」
新人ミサキの平身低頭な挨拶。
なんせ自分を取り殺した相手とチームで、いつ終わるとわからない、取り殺し活動をやっていかねばならぬのだ。
変にへそを曲げてギクシャクするより、下手に出るのが得策だろう。
そんな新人ミサキの態度に先輩風吹かせミサキも出てくるわけだ。
「アイツ最近チョーシ乗ってるよな」
「次はアイツに成仏してもらいましょうや」
「鼻つまミサキものですな」
「…………」
もはや成仏が目標でなくなり、いかに心地の良い集団を形成するかが、彼らの目標にすり替わる。
そうしてメンバーが一巡する頃には、時代も移り変わり女性メンバーが加入するようになる。
男女共同参画取り殺しキャンペーンである。
「あのえっと早く一人前の七人ミサキになれるよう頑張ります!」
大きく丸い猫のような瞳。
髪は夜の闇を溶いたような黒。
風になびく髪を押さえる指のなんと細く白い事か。
儚げな見た目と相反し、快活な性格の女ミサキ。
ギャップ萌え。
彼らが紅一点を取り合い、不和が生じるのは自明であった。
女ミサキと最も親密な仲となった者から、
閻魔は成仏した彼らの所業を浄玻璃の鏡で見るのが楽しみになった。
血を血で洗う亡者の足の引っ張り合い。
これが恋愛リアリティーショーの起源といわれている。
最初の女ミサキが入ってから十三人が
女性の社会的地位の向上に従い、七人ミサキの編成も大きな変化があった。
メンバーが全て女性となった。
何を隠そう最初の女ミサキはハーレム趣味がある強欲なタイプのレズビアンであった。
七人ミサキは悪女が栄える暗黒時代に突入する。
初代女ミサキを頂点とするヒエラルキーが形成され。
この頃になると閻魔はリアリティーショーに飽きはじめていた。なにより閻魔は、まんがタイムきららを愛読するタイプなので、刺々しい百合はあまり好かなかった。
ややあって七人ミサキ業界が震撼する
「猫ちゃんとかほしくないですか?」
「いいねそれ採用」
動物メンバーの加入である。
三毛猫に始まり、柴犬、ロバ、鶏が加盟した。
動物嫌いのトップミサキ、ネコアレルギーといって
「ブレーメンの音楽隊かな?」
閻魔は動物バラエティーへ大きく舵を切った七人ミサキ動物園から目が離せなくなった。
最終的に七人ミサキを構成する人間のメンバーが居なくなり、七頭ミサキになる。
悲しいかな彼らは動物なので七人ミサキのルールを、理解ができなかった。
そのうち紆余曲折を経て十二頭の動物で構成されるグループとなる。
後の十二支である。
何かのはずみで猫が弾き出されたのは言うまでにもない。
その猫の名を
七人ミサキの成仏する順番が決まらないので、くじ引きを作ることになりました 鮎河蛍石 @aomisora
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