有隣堂しか知らな異世界

維 黎

プロローグ

「――みなさん、Pからメールが来てここに来たんですよね?」

「そうです」

「はい」

「そうだよー」

「――(コクコク)」

「え? 何? なんで間仁田まにたさん返事してくれないの? しゃべれない? 腹話術かなんか?」

「――(ブンブン)」

「いや、だから。なんでしゃべんないんすか? 皿の洗い過ぎで声出なくなったんですか?」

「――そうです」

「えッ! マジで!? 洗い過ぎで!?」

「――メールが来ました」

「そっちの返事!? ほんと、質問と答えが嚙み合わないっすよね。間仁田さんって」 

「それじゃ、ブッコローのとこにもメールが?」

「来たよー、来ましたよぉ、いくさん。『伊勢佐木町本店の業務用エレベーターで地下まで来てくれ』って」

「でも地下室ってほとんど使われてなくてゴミ箱――じゃない、物置きみたいなものなんですけど」

「――ザキさん。自分とこの会社の地下をゴミ箱って」

「ちょっと言い間違えました」

「ま、まぁそんなことはいいとして。とりあえず行きます? って、このエレベーターって5人乗れましたっけ? ――雅代まさよ姐さん、ここで待ってます?」

「嫌ですよ、真っ暗な店内で一人でなんて。アタシも行きますぅ」

「じゃぁ、間仁田さん。エレベーターの扉、開けちゃってください」

「――ッ!?」

「なんで『えっ?』みたいな顔してんすか。貴方が一番近いんですから、間仁田さん開けてくださいよ」

「――ブッコローも近い……」

「声、ちっちゃ! さっきからなんなんっすか。首動かすだけだったり、声がちっちゃかったり」

「――緊張しちゃって、ガッチガチ」

「はぁ!? なにを緊張することがあるんですか。――とりあえず開けてください。エレベーターの中の扉、なんすよ。ボク、この世で蛇腹の物って嫌いなんですよね。唯一、蛇腹で好きなのは焼肉のカルビくらいなんで」




「――ちょっとキツイですね、さすがに5人は。じゃ、行きますよー。〝B″を押して……と。怖ッ!? 動き出しがめっちゃ怖いんですよね、このエレベーター。――着いた、と。正直、ホッとしてるわぁ。築64年ビルのエレベーターっすから最悪、動かなくなって出られないって可能性もあるし。さっさと扉開けて出ましょう。内側の扉、蛇腹ですけどいいです。ボクが開けちゃいます……って、うわぁぁぁぁ! な、何だぁぁ!? ま、眩しいッ!? それにこの音! 耳うずくッ!! だけにッ!! ああぁぁぁ! す、吸い込まれるぅぅぅぅ」











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