我儘の代償
青空一星
原初のバツ
黒の城。
堕ちたモノは芽吹き、葉を付け新しいタネを落とし脈々とその
それを善とするか悪とするか、真とするか偽とするか、それは
それが悪であるのなら、
下されるのは
気付けばそこにいた。
玉座の間、王である俺様のための場。その存在は未だ泡のように不確かだが、俺様の支配が行き届いた空間だ。
前には頭を垂れる臣下達、名すら知らぬ其奴等は無条件の愛を俺に捧げている。
それは当然の事なのだと理解した。
その時、この世の全ては俺様のために存在していたのだ。
しかし、新たな○○を見つけると奴等は俺への貢ぎ物を疎かにし、俺様のモノではなくなった。
だから○○との繋がりの命を絶った。その腹を裂き、粉々にして無変の塵へと変えてやった。
臣下達は俺に跪き、もう二度と同じ間違いは犯さないと誓った。何よりも優先されるべきなのは俺様だと、さもそれが俺の望む事だとでも言うかのように必死の思いで侘びていた。
だから俺は奴等を殺した。
当然のことを誓うなどと抜かす阿呆共、俺様の事を知ったか振った痴れ者共など臣下ではない。
存在を許しているのだから、俺様の臣下に相応しい者でないのなら、俺様の世界に生きる価値は無い。
それからは何事もなく平穏に暮らし、城の造りはより確かなものとなった。特筆すべきは俺様自慢の玉座だ。
固いクッションと豪然たる装飾の数々、そして威厳の分まで伸びた背もたれ。俺様の玉座に不足のない絶品が出来上がった。
俺様は益々その権威を付けていたのだ。
そこへ三度に亘り、襲撃が行われた。
一度目の襲撃。数は一人、特別記憶に残らないような、有りもしないはずの刺客。
白い靄を纏い、透明度の高い水飴のような身体をしており、その手にはなまくら刀が一本握られていた。
刺客は城門前に立ち、機を伺っているようだったが、既にその姿は補足されていた。
王はため息をつき、手すりに掛けていた腕を少し上げると─
ギュッ
空手を握り締めた。すると刺客は見る見るうちにその体積を減らし、終いにはりんごの芯ほどの大きさとなり溶けてしまった。
王は何も言わず、そのまま寝てしまった。
二度目の襲撃。数は四人、空を飛び直接玉座の間へと立ち入った。
装備は軽装で短剣をそれぞれ装備している。
刺客等は息をつく間も与えぬ襲撃を行う。それが王の認識に及ばぬ範囲での作戦であれば成功したことだろう。が、王へ仕掛けられた剣は空中で止まり、誰一人として王に触れられることなく─
サンッ
全員胴を割かれて殺された。
そして三度目。
王はいつものように、玉座で寛いでいた。右脚を左膝にかけ、暇を持て余している。
虚を見つめ、ただ悠然と時を過ごしていた。
そこへ臣下の一人が報せを持って来る。自らの力で創り出した傀儡である。
「他の○○より力を授かりし戦士が来た」と。
王はその臣下を捻り潰すと玉座の間にいた全ての臣下を一息で吹き飛ばした。
バン!
それに応えるように、扉を破り刺客は玉座の間へと足を踏み入れた。
数は一人、防具を身に着け両手剣を構えている。
その存在は確かなようで揺らいでいる。
その眼光はこれまで他者に見向きもしなかった王の目を留まらせるほど凄まじいもので、刺客の目に宿る何かを王は理解できなかった。
しかし王は歯牙にもかけないように振る舞う。
ダッ
刺客が石床を蹴る。玉座までその距離50m、到達までに15秒もかからないだろう。
王はあくびをしている。
残り30m、一直線に王の元へ駆ける姿はその巨体も相まって牛を連想させる。他など視野に入れず、王のみを標的に置いた走りだった。
王は目を擦っている。
残り15m、ようやく王が動いた。手を前へとかざし、狙いを刺客に合わせた。
ギュッ
王の空手は刺客を確かに捉えた。が、潰れない。
動きを止めたものの、刺客の身体は元のままそこにある。
「なんだと」
刺客が着けている防具は王の力に拮抗するものであり、容易に割けるものではなく破壊されるものでもない。さらに、その肉体から発せられる力は不確かでありながら王の圧のみで潰えるものではなかったのだ。
王はこの時初めて、己を打倒し得るものがこの世には在るのだと知った。
ズン…ズン…
刺客が詰め寄る。王は身震いした。
このままでは殺されてしまうと分かってしまったのだ。
そのような事があってたまるか、この俺様が恐れを抱くなど─
「この俺様に向かって…
何様のつもりだキサマァ!!!!」
ザクン!!
妥当の
敗れた王の後に遺ったのは新しい
偽りの名札を付け、光は注がれる。また新しい
後に訪れるモノは様々であろう。
これから幾度となく裁かれ、辿り着く路々に有するのは真のイシか偽のハナか。
槌は振り下ろされる。
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