筋肉な恋
石嶋ユウ
筋肉な恋
私は、
もう一度言う。私は、アイツの筋肉が好きであって、アイツのことが好きというわけではない。
なので? 放課後、アイツの家で、私が今、アイツの上着を脱いで上半身の筋肉がむき出しの姿をまじまじと見つめているのは、決して恋愛的な感情からでは決して無い。それなのに。それなのにだ。何故だか胸がドキドキしている自分がいる。
「みさき、どうして俺の体をじっと見てるの?」
アイツが言う。アイツの頬が少し赤い気がする。
「なんでって、あんたの筋肉が好きだから……」
「それにしては、お前の顔、赤すぎないか?」
「……言わないでよ」
「ごめん……」
なんで、こんなにドキドキしているんだろう、私。ただ、アイツの筋肉を見たいと思って、無理矢理家まで押しかけて、見せてもらっているだけなのに……。
「みさきさ、お前、どうかしてる」
アイツは、笑いながらこう言った。確かに私はおかしいのかもしれない。ようやく自分のおかしさに気づく。
「だから、俺もおかしなことをお前に頼んでも良いか?」
私は首を縦に振ることしかできない。なぜなら、私は既に、上半身の筋肉を見せて欲しいというおかしなことをアイツに求めているからだ。
「一生、俺の筋肉だけ、見ていてくれないか? みさきには俺以外の誰の筋肉も見て欲しくないんだ」
ずっと前から、薄々知っていた。私もアイツもお互いのことが恋愛的に好きなのだ。アイツの筋肉だけが好きだったはずの私にとってはあまりにも衝撃的な結論だった。でも、抑えきれない気持ちが湧き出して、私は彼の胸元に飛び込んだ。
それが言葉よりも雄弁な返事だと直ぐに気づいた。
「あんたもこんな私を選ぶなんて、どうかしてる」
「ありがとう」
「……こちらこそ」
二人きりの時間が流れる。私は意を決して、
「伸二」
「何? みさき……」
私は
筋肉な恋 石嶋ユウ @Yu_Ishizima
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