好きすぎて騙すしかなかった

水花火

第1話


「どこからきたの?見ない顔だけど」

遥香は、最近図書館で隣に座る可愛い女の子に話しかけた。

「隣町」

「あぁ、図書館ないっけか?」

「あるけど、あんま好きな本ないし」

「ふぅん、私、佐山遥香、桜高校二年よろしく」

「涼子、定時制よろしく、みんな涼と呼んでるから」

「定時制なんだ、仕事も忙しいね」

「まぁね」

二人は他愛のない話をしながら過ごした。

「バイトいくから、またね」

遥香はかるく手を振った。

翌日も、またその翌日も、二人は図書館で逢った。

「なんか、よく逢うよね、不思議、仕事とかで、疲れてないの?、てか、どんな仕事?」

「眠くないよ、仕事っていっても、親戚の工場だから、自由なんだ」

「ふぅん、ねぇねぇ、一緒になんか食べに行かない?」

「いいよ、何にしよっか」

「駅前の、パフェが美味しいって評判だから、そこにしよ」

二人は並んで歩いた。いつの間にか自然に手を繋ぎ歩いた。

「涼の手、ごついね」

「恥ずかしい、みんなによく言われてさ」

「あっ、ごめん。気にしないで」

遥香はハグした。

「いい匂いするね、遥香って」

「シャンプーかなあ」

二人はどこから見ても仲の良い友達だった。

店内に入り早速メニューを見ながら遥香は店イチオシのフルーツパフェを、涼はチョコレートパフェを頼んだ。

「美味しい~やばいね」

遥香が身体全体を震わせ涼は笑った。

「涼、食べてみてほら」

遥香は自分の食べているスプーンから涼の口に押し入れた。

「うん、たしかに、イチオシだね」

二人はお互いのパフェを、あーんと言いながら食べきった。

その時遥香の携帯が鳴った。遥香はパフェを食べてるときより嬉しそうに話していた。

電話を切ると照れ臭そうに

「彼氏から」

と言った。

「彼氏いるんだ、好きなの?」

「当たり前じゃない彼氏だもん」

遥香が笑った。

「涼は?」

「ん、ん、ん、ふられちゃった」

「あっ、ごめん、悪いこときいちゃったね」

二人は少し暗い雰囲気になり、店を出ることにした。どこか気まずく感じた遥香は

「涼、又明日」

と言った。すると涼は

「もう、逢うことはないよ」

「どうして、なんか気にさわったなら、謝るから、ごめんね」

「違うよ。失恋したからさ、さっき」

遥香は意味がわからず困惑した。

「ハグしていい」

涼が遥香に近寄った。遥香は少し戸惑ったが最後なのだからと笑顔を向けた。

涼は力の限り遥香を抱きしめた。

「いたいよ、涼」

涼は力を緩め、その瞬間遥香の唇を奪った。

遥香は驚いて涼をはねのけた。

「な、な、なんなの」

涼は薄笑いを浮かべ

「騙してごめんな。俺、君のことコンビニで見てから、ずっと好きでさ。我慢できなかったんだよ」

遥香は膝から崩れ落ち、走り去る見知らぬ男の背中を見つめた。



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好きすぎて騙すしかなかった 水花火 @megitune3

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