初めての町「バルトニア」 ①
ロイの方に攻撃に向かった山賊はというと……
「てめぇら……歯を食いしばれ!!」
と言って持っていた剣を振る。
剣は山賊たちのかなり前方で振られているから当たるわけもない。
だが、その振るった風圧で山賊が吹き飛んでいる。
人ってそんなにも高く飛ぶんだってぐらい。
ちなみに、風圧が山まで飛んで、山がまた削れている。
あとその言葉、パンチでよく使うやつだから覚えておいてほしいなぁ。
アザレアを攻撃しに行った山賊はというと、
「とりあえず、ぺちゃんこにしちゃいましょう。腹が立つし」
と言いながら詠唱を唱えた。
すると、普通に走って来た山賊が急に地面に倒れる。
そして見事なまでに、山賊の皆さんは地面にキスしている。
木々が押しつぶされ、山が低くなっていくのがわかる。
「ぺちゃんこ」という言葉の本当の意味を理解した。
で、数分後山賊の親分が縛られて捕まっていた。
周りの山は原形をとどめておらず、地形が変形している。
もう少し手加減をしろよ、環境に悪いだろと思いつつも、空高く飛びたくもないし、ぺちゃんこにもなりたくもないから黙っておく。
そして、ロイとアザレアが優しい言葉で話しかけている。
「親分……俺は今、とっても気分がいい。今なら慰謝料ということで、特別に山賊の持ち金の半分で手を打とうじゃないか」
「親分さん、私も気分がいいので、持ち金の半分でいいわよ。特別だからね」
おいおい、どっちが悪者だ?
というか、二人で全部取る気じゃないか。
「けっ、なんでお前らみたいなボンボンに金を……イテテテテ!!!」
アザレアは親分の手をグリグリと踏みつけていた。
「ごめんなさい。ちょっと、聞こえなかったんだけど。もう一度お願いしていいかしら。早くお答えいただかないと割り増し料金が発生しますわよ」
悪魔だ……と思ったけど、魔王だった。
まぁ、似たようなもんか。
「わかった!わかった!!有り金の場所をいうから許してくれ!!」
親分はその後、有り金を隠しているアジトを教えてくれた。
で、開放するのかと思いきや、そのまま二人はアジトの方に歩きはじめる。
その姿に僕が慌てる。
「おい!こいつらはどうするんだ?」
「そのままだけど?町に着いたら憲兵呼ぶから」
そう言うと、ロイもアザレアもすたすたと歩いていく。
僕はこの二人が怖くなる。
後ろから山賊の親分が何か叫んでいる気がしたものの、気のせいと思うことにした。
そして山賊のお宝を回収してから、町に向かい……到着した。
ただこの町は城壁に囲まれているタイプの町で出入口は一つしかなかったため、かなり遠回りさせられてしまった。
どうして入り口が一つしかないんだよ……と思ったが、仕方がない。
僕たちが初めて着いた町「バルトニア」に入った時点で、すでに夜になっていた。
パッと宿を決めて、待望のご飯を食べに行くことにする。
もちろん、ロイとアザレアもついてくる。
酒場のような店に入るなり、元気な店員が声をかけてきた。
「いらっしゃい、三人でいいですか・・・?適当な席にどうぞ」
バトラーとメイドを連れたボンボンに見えたのか少し驚いていたようだが、そこには触れずに案内をしてくれた。
ふぅ、これでようやくご飯にありつけそうだ。
席に座ってメニューを見る。
こっちの世界の文字は読めないのでロイに任せると、食べ物を三人分頼んでくれてすぐに食べ物がきた。
出てきたのは、豚と思われる肉を野菜と似たスープのようなものだった。
「しっかし、人間ってのはどうしてこんな変なものを食べるのかしら」
「別に食べなくていいんだぞ。俺が食べるから」
「誰も食べないって言ってないでしょ」
この程度の口喧嘩であれば、もう可愛く感じる。
物損が無ければ、もう何でも可愛い。
ただ、二人ともお腹がへっているのか、口喧嘩はそこでやめてさっそく食べ始めた。
僕も食べるためにスプーンを持って食べ物をすくった。
さっさと食べよーっと。
「キャッ!」
ガシャンという音と主に悲鳴が聞こえる。
おいおい、この二人はまだ喧嘩したりないのか……ご飯食べさせてくれよと思ったが、声が違う。
若い女の子の声だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます