第21話 仮想世界Bと僕
僕は駅東口を出て東京ドームを右手に白山通りを春日方面に向かった。前方左に“菜”が壱岐坂方面に曲がったのが見えた。僕は目で追い“菜”は曲がり切って消えた。『菜あとでまた会おう』僕は前を向き歩き出した。僕は歩き続けた。そして脳内だけはパズルのように点と点を一つずつ線にしていった。みすずは菜らしき境界線人がBと接触したと言った。菜は、男子高校生のソトカワにつきまとわれていると言った。たぶん、間違いなくソヨカワとBは同一人物だ。そしてBは、菜との接触により偶発的に力を得た。もしかすると無意識で行っている行為だ。人間界でオカルト的に言う“幽体離脱”に近い状態かもしれない。拒否する菜が、なにかしらB に結界を張りその結界に触れて境界線と共鳴したのだろう。そして僕はBのマンション前に着いた。601号室、外川の表札。間違いない。彼はBとソトカワは同一人物だ。みすず達の情報によると彼はここで一人暮らしのようだ。両親は長く海外赴任だとか。僕は1FエントランスよりBを確認た。僕はこのくらいの距離なら魔眼で透視できる。彼の部屋に入り込む。『暗い』予想通りだが思った以上にシンプルで片づいている。さすがG高のおぼっちゃまって感じの部屋だ。泥臭さがない。なんだか無性に腹立たし。「誰だ」Bが僕に気づいた。その言葉と同寺に僕は透視から元の身体に戻りインターホーンを鳴らした。Bは僕にドアを開けた。「どなたですか?」やはり育ちがいいのだろう対応がいい。引きこもりと聞いていたからもう少し荒れたイメージだったが。「突然だけど、君に聞きたい事があるんだ。」「どうぞ中へ。さっき来ていたのは君でしょう。」B は僕を見透かしているようだ。「ソトカワ君、君はどこまで境界線のこと知ってるの?」「どうぞ中へ、ゆっくり話しましょう。」高校生とは思えないくらいの落ち着きだ。僕は部屋に入った。透視の時は『暗い』と思ったが。Bがすかさず「夕暮れ時の中途半端時間電気をつけるのが遅くなって。それに面倒で。さっきは暗かったでしょう。」当たり前のように僕の脳内を読みとり返事をする。「ソトカワ君、その能力どうやって手に入れたんだ。」「これですか、”雨宮さん”から頂いた力ですよ。」『菜か』「そうです。雨宮さんです。ところでお名前を聞いてもいいですか?」大人げもなく名前を名乗るのを忘れていた。「僕はナダワタルです。」「ナダさんですか。雨宮さんとはどういう関係ですか?」僕は説明に困った。「ナダさん困ってますね。ではいいですよ。僕は雨宮さんを探していたんですよ。僕はナダさんが思っているとおり仮想世界Bのゲームの製作者です。このゲームには僕の知らない間に空間狭間の世界Xに乗っ取られました。Xは自由気ままにこの人間界に電波を透して一方向に流しコントロールしだしました。」「狭間の世界Xか。境界線にいたときチラリきいたX。どちらかと言えば負の空間との認識していたがまさに負のようだ。「そのXにゲームは乗っ取られ、僕は手を引いたんです。それに、もともと学校の宿題のシュミレーションゲームだったんで。僕は飽きていたしね。」僕はXの話より菜をどうしてBが菜と接触したのかを知りたかった。Bは「じゃその話からしましょう。いつものようにオンラインゲームで遊んでいるとXが急に僕に接触してきました。はじめはモブ程度の軽い会話であしらっていましたが、そのうち境界線や京の空間世界があることを教えてくれました。そしてXが言う通りF高に境界線人がいた。Xは境界線人に接触するとその境界線人力がもらえるといった。境界線人は”自然と分かるよ。出会いは必然だ。もうすぐ。”その言葉通り、電車の中で僕は雨宮さんを見つけた。それまで僕は幽霊も宇宙人も信じない人間だった。そんな僕が見つけたんです。雨宮さん、ものすごい光を放ち。その光が当たると電車の弱い人間がスーッと消えていきました。怖いくらい。僕は電車内でその光景を見て、こんな人は、いない。”特別な人”だとはっきり認識しました。しかし、雨宮さん自身は気づいていないらしく。それから僕は雨宮さんに付きまとってしまった。嫌がれていることはわかっていたが雨宮さんに会うと僕は能力が、増した。それはもう一人の僕を形成していき、他の空間世界を攻撃するようになったんだ。それがXに乗っ取られたもう一人の僕です。PCの僕が勝手に動きだし。僕にはコントロールできなくなった。だからナダさんが心配しているようなことは全く僕にはありませんよ。雨宮さんのことは何とも思っていません。」なんとなく情けない。高校生に心を読まれて気を使われている。とりあえず僕は「そう。そうなんだ。」としか言えなかった。「そしてそれ以後、雨宮さんに会うとXの負のエネルギーが肥大していくため電車に乗らなくなり、学校もやめたんです。」Bはいたっていい奴だ。それに菜への僕の心も見透かされたし。まあ、いいか。「それで、ソトカワ君、Xを止めることはできるのか?」「わからないです。もう、僕の手を離れています。」僕は境界線で攻撃され人が”京には勝てない”と言葉を思い出した。「それは、」あっ、また読まれた。まあ、いい。「それで」「それはXは京には空間移動ができないみたいです。京の結界を通れないみたいです。それでXは京の人、雨宮さんを狙っているようです。僕では役不足だったようです。」「ソトカワ君どうしてそんなにXのことがわかるの?」「あー、それは簡単なことですよ。Xはもう一人の僕。PCを乗っ取っているつもりだけど実際はPC内のホストはすべて僕が握っています。ググってゆくとXのリアルタイムの考えも次の行動も予測がつくんです。」「それはすごいね。」ソトカワ君の顔が明るくなり「僕の得意分野ですから」「そうなんだ。」なんとなくXの件も含め概要が、わかってきた。「ソトカワ君、今日は突然で申し訳なかった。また改めて会えるかな。」「大丈夫ですよ。僕、今引きこもり中ですから。」さらっと笑って言った。「それに僕、こう見えて頭いいですよ。大検受けて、東大にでも行こかなって思っていますから。」「そうなんだ。じゃ、また。」僕は部屋を出た。”状況を整理しないと。”空が暗くなった。白山通りを僕は、また水道橋駅に向かって歩き出した。
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