魔女はただやりたいことをするだけ。
明晶(あきしょう)
魔女誕生編
第1話 生物誕生
私としたら何をしている。覚醒し始める脳で独り言をし始める。
今日は何日の何曜日だったろうか、今日の会議資料は大丈夫だろうか、朝食を食べてシャワーを浴びないと時間が無くなってしまう、嗚呼会社になんて行きたくない。
いつもそう独り脳内で呟いて目を覚ますのが私の日課だ。大変幸せなことに今朝は快晴だった。雨や曇りだと気分が少し悪かっただろう
太陽が木漏れ日になり私を照らして、遠くで小鳥の
まずは私の過去を思い出す。私の名前はヨメタニハルカ、年齢は27歳で国籍は日本人である。地元の短大卒で現在は雑誌編集社に就職し毎日プレゼン資料を作成する日々を送っていた。昨日はいつも通り仕事に勤めてスーパーで惣菜とおにぎりを購入し食べずに自宅の買い置きしてあるリキュール酒を
次に寝起き後の状況だが私は今パジャマも下着も身につけていないまま静かで自然を感じる森の中にポツンと存在している。
「
声は普通に出せた。なんだかいつもより綺麗な声に聞こえる気がするけれど今はそれよりも目覚める事が先決だ。
私なりの仮説その1で明晰夢としてこの視界に広がる大自然が
悪い想定をしない為にも体と脳には悪いが無理にでも起き上がりたいのだ。その為にはこの大自然の解像度を一度確認し夢であることを証明しておきたい。夢であることを逆に願っているのだ。それには私なりの仮説その2が答えになる。
私なりの仮説その2で弟がハマって読み
夢ばかり見ている弟の趣味に口出すことなんて毛頭無いが、今いる現実を体験している私であるから少し意見しよう。
異世界転生の何が素敵なんだ。それはフィクションであるから面白いのであってノンフィクションで起きてしまえばそれは素敵ではなく混乱だ。現に私も弟の好きな本のジャンルを聞く機会がなかったらこんな世界を拒否して発狂していたかもしれない。それに何がチートスキルだ。そんなものを夢みるくらいなら現実で努力した方がよっぽど良い、甘い考えを持って社会で働けば途端に体と脳が壊れてしまう。優しい世界を望むな、現実は自分が思っていた程に苦痛で厳しい。それに可愛い女の子にチヤホヤされて、男に尊敬される世界は金と美貌でしか解決しない。それが無いから現実では無い要素をフィクションで求めてそれに共感した若者が声を上げて、異世界転生が売れると分かった小説家がオリジナリティを競い合っているじゃないか。
本屋で気になる文芸作品はないかと立ち寄った時、書店員のおすすめのほとんどがそのジャンルで埋め尽くされた時は感情が冷えたのを覚えている。話を戻そう。結論は異世界転生というものはフィクションだけでいいということだ。今の私は言い表したくはないが異世界転生人だ。想定していた優しい世界ではなさそうなところが意外と私の見る夢らしいのがまたしんどい。まるで私が求めている異世界転生の世界のようで。
はあ、もうやめよう。どの仮説が立証されても全裸で行動は社会人の恥だ。
私は重い腰を上げてゆっくりとした足取りで大きな葉に手をかける。森の奥行きも素敵なもので小動物達が私の様子をジッと観て
もし夢なら後でふれあいに行こう、そしてもし転生していたらすぐに狩ってしまおう。私独りなのだからやりたい放題してしまおう。
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