第26話 40万?!

オルトロスを倒した俺は次の階層に来ていた。


目的は山野の救出。

そこまでとっととすませてしまおう。


(さてと、マップ、確認しておくか)


ここは2階層。

まずは、ボスフロアを探してみたが


(ないのか?ボスフロア)


ボスフロアらしきものは見えなかった。


それから


(ボスの反応もないな?ここはボスがいないのか?)


ボスがいたらマップに反応が出るはずなんだけど、な。


反応がないのを確認して俺はダンジョンを進み始めた。


"同接20万超えたな"

"正直ユラッチとコラボしただけの一発屋で終わると思ってた"

"まさか、ここまで伸びるなんて"

"今はあれだろ?日本初の深奥チャレンジだから、だろ?"

"それがデカいだろうなぁ。なんか今教材に使われてるらしいし"

"ナイトで検索したら授業で見てるって呟きめっちゃ出るから、かなり多くの授業で使われてると思うと草"

"実質のリスナー何万なんだろうなw"


なぁ、俺もう配信やめていい?

やめたくなってくるよ。


20万人以上に見られてるなんて、あーやだ。

でも、溝谷とも約束したしなぁ。


『お前が救援まで行ければ俺はお前が近くにいたって最後まで言い切るから』


って。溝谷も言ってた。


今はあいつのこと信じるしかないよなぁ。


裏切りはナシで頼むよ?


"もうさっきのオルトロス戦切り抜かれてるわ"

"スピード勝負だもんな"

"てか、ナイトって切り抜き許してんの?"

"なんも言ってないはず"

"そこ、どうなんだろうな?"


切り抜きか。

あんまり切り抜かないで欲しいけど、名前出すのと同じで、注意したところで勝手に切り抜くと思って無視してる。


でも、ここまで同接伸びてるならそこも白黒付けるべきか。

今更だけどさ。


一応禁止しておくことにしよう。

効果くらいはあるだろ。


「ツイキシタ」


概要欄に切り抜きは禁止、と書いた。

やるやつはそれでもやるだろうけど。


それと、切り抜き禁止したんだから見所は後で公式でアップしとく、とも書いた。


深奥エリア。

もっと複雑なエリアになっているのかと思っていたけど、意外と一本道が続いてたけど


(この階層だけ入り組んでるな?)


右に左に、ってグネグネ道が別れていた。

その道中。


(ちょっと広い場所だな、ここは)


そう思いながら道を進むと、次の階層に繋がる階段を見つけた。


それから、その横には穴があった。


(人の気配?)


中に入ってみると


「だ、だれだ?!モンスターか?!」


声が聞こえた。

それと同時に


ブン!

剣を振ってきた。

ゴッ。


その剣を横から拳で叩くと折れた。


「アブナイナ」

「ひ、人なのか?!す、すまない!」


すぐに謝ってくる。

薄暗い穴の中を奥までライトで照らしてみると。


穴の中には10人ほどの人間がいた。


「ヤマノ?」


ここにいるヤツらが救援待ちのやつらかな。

救援までは来れたらしい。



なるほどな。

前情報通り3層のボスで詰まっているらしい。


挑んだけど、敵が強くて。


それで全滅を予感して逃げてきた、というらしいが。


"Sランクだろこいつら全員"

"Sラン10人前後いて勝てないボスってなんなんだよ"

"深奥エリアってそんだけやばいんだな"


ジョニー:だから言ってる。深奥エリアは難易度跳ね上がるって。最初に帰れと言った理由も分かるでしょ?


"ジョニーの言う通りみたいだな"


ジョニー:救援はできたんだ。今から帰るといい。深奥はほんとにちゃんと準備した方がいい。


チャット欄を見ながら山野に聞く。

離脱アイテムは持ってるかどうかを。


「そ、それが使えないみたいなんです」


山野がそう返してきたので俺はアイテムポーチから離脱用のアイテムを取りだしてみたけど。


【このアイテムはここでは使用できません】


という表示。


"はぁ?!なんで使えないんだ?!"

"え?どうすんの?!これ!"

"歩いて戻るのか?!"


チャット欄のスピードが速くなった。

んー、色々と選択肢はあるけど。


とりあえず俺は端末でマップを開いてみた。


深奥エリア

2/3



なるほど。

このダンジョンは次で終わりなようだな。


山野に目を向けた。


「ススメソウ?」


俺としてはもうこのまま奥まで進んで、ボスを撃破してしまった方が早いと思うけど。


と言うと


「い、嫌です……」


いけそうか、無理そうかを聞いたのに気持ちの話をされた。


他の冒険者にもその気持ちは伝わっているようで。

ポツリ、ポツリと他の奴らも漏らしていく。


「あ、あんな地獄……もう戻りたくねぇ」

「正気かよ?またあそこに行け、だって?」

「死んでも嫌だ。あそこだけは、オルトロスなんてカワイイもんだったぜ。あれに比べたら」


大の大人が口を揃えてそう口にする。

全員もう戻りたくない、と。


"3階層。なにがあるんだ?"

"へい、ジョニー。教えて"


ジョニー:ボスなんてダンジョンごとに変わるから知らないよ。でもこれだけ嫌がってるんだし、やめといた方がいいんじゃない?それだけ強いってことだよ


"どうすんだ?ナイト"

"こいつが撤退するところなんて見たくない!"

"脳筋ナイトなんだから行くよなぁ?!"


山野達の視線を集めながら俺は腰を上げた。


答えは当然。


「イコウ」


"キタ━(゚∀゚)━!"

"流石ナイト。期待を裏切らんな"

"Sラン10人が負けたところに突撃するなんてwwwやべぇwww"

"他の配信者だと絶対逃げるからなwww"


そのまま階段の方に向かおうとすると山野達が止めに来る。


「ま、まってください!ほんとにやばいんですって!」

「待てよ甲冑!この先はほんとに辞めといた方がいい!」

「落ち着け!考え直せって!このまま来た道戻りゃいいだけじゃねぇか!」


ゴソゴソ。

アイテムポーチを取り出すと。


ドサッ。


持ち込んだ回復アイテムを置いた。

自分の分は最低限だけは残してある。


「甲冑。お前……これはどういうことだよ?」

「フヨウナモノダ」


山野に目を向けた。


「ジャアナ」


俺はそのまま階段を降りていった。


まだ見ぬ3階層を目ざして。


"ついに深奥エリアのラスボス……"

"ゴクリ"

"伝説の瞬間だな……これ"

"新たな伝説だわ……"

"ドラゴンとかソロ討伐してきたけど、今回はガチで伝説だわ"

"一応個人用に録画しとくわ。(この配信で)最後かもしれないだろ?"

"縁起でもないこと言うな"


口を開く。


「ヨワッテルシダイジョウブダロ(弱ってるし大丈夫だろ)」


山野達が先に行った時ある程度ボスの体力を削っていると思う。

だから、多分大丈夫。


「ま、待ってください」


階段を下りていたら俺を呼び止める山野。


「ナニ?」


ギリッ。

歯を食いしばっていたけど顔を上げて


「私も……行きます」


"怖いなら来なけりゃいいのに"

"足引っ張んなよー?"

"役に立たない前提かよwww"

"完全にもうイメージがナイト>越えられない壁>>それ以外になってるなw"

"実際オルトロスソロで倒せてやっと、ナイトと共闘って感じでしょ……?ハードル高すぎ"


「ホカノヤツラハ(他の奴らは)?」

「帰りました」


で、こいつだけ残ったわけか。


「スキニシロ。シンデモモンクハイウナ(好きにしろ。死んでも文句は言うな)」


そのまま歩いていく。


チラッ。

そろそろコメントに反応でもしようかと思ったら。


"おいおい、同接やばすぎん?40万超えたぞ"

"ファーwwwまじで?www"


同接を見てみた。

すると


(げっ。本当に40万じゃん。さっきまで20だったのに?!)


"深奥エリアのボス。期待されとるでナイト"

"これはやらかせませんなぁ"

"学校から応援してます!"

"いいなぁ?この放送を授業で見れるの"

"ついにナイトで義務教育を終える子供たちが現れるのか"

"俺もナイトで義務教育終えたかった"

”これがナイトチルドレンちゃんですか”


んで日本語のチャットに混じりながら、海外からのコメントもあった。


"crazy boyyyyyyyyy"

"海外ニキ('ω')チッス"


ついに海外のリスナーも増えてしまった。

俺はほんとにこのまま続けて大丈夫なんだろうか?


このまま世界進出しない?とか思っていると。3階層に到着。

すぐ目の前に扉。


「覚悟はできましたか?」


そう聞いてくる山野。


「絶対に入ったことを後悔しますよ」


そう言って俺の横に立つ山野。

俺は扉に手を当てた。


「ん?」


しかし今までの経験上すんなり開いていたはずの扉は開かなかった。


(条件があるのか?)


この階層、ボスいなかったし。

ボスフロアもなかったよな?


でも、開かない。

扉の左右を見てみると


(台座がふたつ?なにか置くのか?オルトロスが落としたアイテム置いてみよう)


ガー、ズコ。

一つの台座が下がった。

どうやらカギになってたらしいけど、もう一個は?


俺の視線に気付いたのか山野が口を開いた。


「あれ?さっき置いたのに、アイテムがなくなってる」


山野がそう口にしたとき

ユラァ。

山野の後ろの空間が歪んだ。

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