じゃじゃーん!! ナザリベスだよ。あたしはウソしかつかなーい!
橙ともん
第一章 謎々
第1話
いかにもっていう山奥の山荘で、謎解きが、逆に謎を残してしまう物語――
えっと確か……。
岡山県N市の山奥を登ったところにある山荘で――
近所に住んでいる幼馴染で、東京は小平某所――武蔵野文理大学文学部3年生の『トケルン』と――
(彼と一緒にいると頭の中がとろける~という意味です)
外国語科目の私達の授業担当の教授から……、お使いをお願いされて――
そもそも……、私のテストの結果が赤点だったせいです。
補習授業を少なくする代わりに、ちょっとお願いできないかって(むりやり!)頼まれまして――
行くことは良かったんですけれどね――
大問題があったんですよ!
*
「ええ~!! 彼と一緒に行かなければいけないんですか?」
教授から「乙女1人じゃなんだろう」ってことで、トケルンと一緒に行きなさいってアドバイスされました。
トケルンは、私の隣で私と同じように直立しています。
でも、その顔……ムスッと嫌々~な憮然な表情です。
何で教授がトケルンを呼びつけたのかは……、私にはなんとなく理解できたんですけどね。
「……」
無言のトケルン。
「……」
対する教授。
はっきり言って、お互い嫌いなんでしょうね。
トケルンが自分の担当している授業に、つまり外国語に興味無いことが見え見えなのは、私にもわかっていました。
要するに、教授からトケルンへの“お仕置き”みたいな感じで、赤点続きの私と一緒に行ってこいというペナルティなのです。
行った場所というのは、山奥の杉の山道をず~と登ったところです。
夕暮れ近くだったので、太陽も山影に隠れていて、かなり薄暗くシ~ンと静まっていました。
その山荘がですね……。
まあ本当に大きくてビックリくりくり、古風な洋風建築でした!
ほんとにRPGやサウンドノベル、ホラー映画や推理小説に出てくるような、いかにもっていう感じの山荘です!
……あ、玄関で1枚の紙を発見するところの話をしないと、すみません。
えっと……、
この私、武蔵野文理大学文学部3年生の『チウネル』(私の下の名前からできた愛称です。恥ずかしいので私も愛称にさせてください)がですね……。
なにげなく、それを拾って見てみたのです……。
そしたら……、
よく誕生日でもらう「バースデーカード」のようでして、こういうメッセージが書かれていたんですよ。
WELCOME 瑞槍邸
くるとげっとできるよ!
2 - 5 - 193 番地
「みずやりてい、って言うんだ……」
私がカードを見ながら呟くと、
「あっ! 俺、住所を間違えた……」
トケルンが私の持っている紙を横から覗き込んで、彼がボソッとそう呟いたんです。
(そのときの私の気持ち、こいつドツイタロカです!)
「ちょっと! 無人駅からここまでリュックにこんな重い荷物を背負って歩いてきて、どーするんですか?」
私、怒りました!
でも彼って……、私のほうを見ようとしません。
彼、逆切れしているみたいで……、表情をムスッとさせていました。
(ほんとにドツイタロカです!)
折角の東京からの遠出だった私だから、ワンピースでおめかしして着てきたのだけれど……。
それと似合わない大きくて重いリュックを背負っているのは、これ教授からの指令――お使いという名の指令です。
「だから言ったでしょ! あのブルドーザーが駐車していた分かれ道を私は右だって、でも、トケルンが左だろって! 私、てっきりトケルンが住所を知ってて、だから左の道の方が正しいって私も思ってしまい……もう!」
私、いつも彼にこんなふうに振り回されるんです……。
別に、
この前の文学の論説のレポートの宿題を少し見させてもらったときも、すごく論理的で、それでいて面白くて、そういう視点から私、彼の判断を信じたんですよ。
でも、違ってたみたいです……。
「今から戻ると……こんな山道、真っ暗ですよ。懐中電灯も持ってきてないですし。どーするんですか?」
彼、ず~っと夕暮れの空を見上げて黄昏ていて……。
「ちょっとトケルン! 責任とってよ!」
パッとしない地味なTシャツに、七分丈のズボン……。
頭は良いのに、どうしてファッションセンスは落第点なんだ?
雑草の花よりも地味な男子って……はあ……。
(ドツイタロカ……です)
私も最初は怒っていたけれど、もう夜になろうとしていて腹立たしさを過ぎて、なんか……なんでこんな結果になったのかなって?
あの分かれ道で、ちゃんとトケルンと話し合っていれば……とか、いろんなことを思い出していました。
なんだか……、虚しい気持ちになって哀しくも寂しくもなってきて……。
しばらくの間、その
*
「……どうしよう」
私はすっかり落ち込んでいました。
顔を下に向けて、これからどうしようって思って、ふと右手に持っていた……その紙を見たんです。
そしたら、
「あ、裏にも何か書いてある!」
って、気がつきました。
見てみると――
「この邸宅の地図みたい……。2階建て地下1階もある」
そして、
「ん? なに?」
端っこにですね……。
子供が平仮名で書いたような、落書きのような文字を発見したんです!
ちょうちょ――
ちょうちょ――
「あ! これ小学校で
日本人なら誰でも唄ったことがある、その歌詞が書かれていました。
そして、最後に変な言葉が書かれていたんです。
あきにはどこにとまろかな?
「何これ?」
私が思わず小さな声を出してそう言ったときに、私のスマホに非通知オフしていたのに……。
ジリリリリン……
って、電話が掛かってきたんです!
非通知が気になったんですけれどね……。
もしかして教授が私達のことを心配して、電話を掛けてきたのかもって思って、私はその電話に出ました。
そしたら――、
「もしも~し、遊ぼうよ~。ねぇ、謎々して遊ぼうよ~」
どう聞いても、小さな女の子の声でした。
「もしもし……ねえ? ちょっと」
私、間違い電話だろうと思って、その女の子に言おうとしたときです。
【問題】「その紙の裏の謎々解けたら、入っていいよ~」
その女の子がクスクスッて笑って……そう言って。
私は、「はぁ~?」って、頭の中が少しよくわからなくなってしまいました。
――でも、紙の裏とその女の子が言ったから、私は右手に持っていた紙の裏を見つめて……。
そしたら電話の向こうでその子が、
「頭良くないと、解けないけどね~」
またクスクスッて笑いました。
夕暮れで道に迷って、子供に揶揄われるなんて……。
私は落ち込みました。
けれど、気がつくとトケルンが私の持っていた紙の、その平仮名の文字をしばらく見つめてから、
【解答】「イ長調」
って、彼がそう呟いたんです。
続く
この物語は、リメイクでありフィクションです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます